其ノ捌 黒死牟 ページ9
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寝室にわたしを運んだ黒死牟さまは、わたしを招き寄せるとそのたくましい腕であたしを包み込んだ。
「泣いてもいいと言ったが…私以外の鬼の前では…泣くな。
Aは涙さえ…鬼の糧になる。
その美しい涙を…ただの食事として見る鬼などに…Aの泣き顔を見られたくない」
『……じゃあ、子守唄を歌ってください』
「子守唄など…覚えておらぬ」
『ではお話を聞かせてくださいな。黒死牟さまのお話』
「私の話……?」
『どんな些細なことでもいいんです。
わたしは貴方のことをもっと知りたい』
「……いいだろう」
わたしの我儘を聞いてくれた彼は、遠い昔を思い出すように様々な話を教えてくれた。
たおやかな幸せの時間だった。
……どれくらい時が過ぎただろうか。
安心したわたしは次第に眠くなり、黒死牟さまの腕の中でまぶたを閉じた。
『黒死牟さま』
「なんだ」
『これはわたしの寝言です。ご興味がないなら聞き流してください。
……出会った時から、貴方をお慕いしておりました。
願うことならば、わたしが死ぬまでのたった数十年、こうして甘えることをお許しください』
「約束しよう。私がお前を守る…。
何も恐れることは…無い」
彼の深みのある心地いい声を聞きながら、わたしは深い眠りに落ちた。
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ノン - 面白いです。これからも、頑張ってください!応援してます。続きが楽しみです! (2020年8月17日 15時) (レス) id: 5790125387 (このIDを非表示/違反報告)
すみすみすみー - 稀血の女の子が鬼と暮らす場合ですか…おもしろそうですね!更新頑張ってください!こちらも応援します! (2019年10月1日 19時) (レス) id: f033c55e4a (このIDを非表示/違反報告)
いお(プロフ) - (´・ω・`)さん» うわわっ!早速コメントありがとうございます( *˙ ˙* )やる気出てきました頑張ります!!! (2019年9月21日 17時) (レス) id: f9a4668cbc (このIDを非表示/違反報告)
(´・ω・`) - 好き…更新頑張って… (2019年9月21日 8時) (レス) id: 03f6bf06e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いお | 作成日時:2019年9月20日 22時