もう二度と跳べない。 ページ2
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バレーボールは、私の全てだった。
高校最後の春高バレー。
誰もが憧れるこの舞台。
決勝戦。
マッチポイント。
湧き上がる歓声、ベンチからの声援、そして同じコートに立つみんなの大丈夫だと言う表情。
私は思い切ってジャンプサーブを打つ。
相手は弾き飛ばされるが何とか持ち上げる、だが一人一人がバランスを崩したためスパイクまで持って行く事が出来ず、チャンスは私達のチームに訪れた。
そして、セッターである同期の子とアイコンタクトを取り、彼女は綺麗なトスを上げる。
私は迷わず、思い切りジャンプをして。
相手のコートにバシッと音を立てて、私のスパイクは綺麗に決まった。
春高三冠を果たし、私は様々な大学や実業団から進路についての誘いがかかった。誰もが、ウチに来ないかと、私を求めていた。
単純にそれが嬉しくて。
毎日遅くまで、どの道に行くか考えた。
でも、そんな時。
私は、練習中に大きな怪我を負った。
もう二度と、跳ぶ事のできない身体になった。
リハビリすれば可能性はあると言われた。
それでも、リハビリをすればするだけ、バレーへの恐怖感が大きくなった。
リハビリ何かしても、一向に跳ぶ事が出来なかったからだった。
私は、メディアに騒がれる事なく
この大好きだったバレー界から姿を消した。
それから1年。
私はただ無力で。
何をする気にもなれなくて。
進学もしなければ、就職もしなかった。
親は私の事情を知ってなのか、何も言わなかった。
休日、私は気晴らしに散歩に出掛けた。
家の近くにある公園に座る。
ボーッと空を見上げた。
その時、背後から誰かが近付いてきた。
「....もしかして、君は」
何処かで、聞き覚えがある声だった。
ゆっくり振り向くと、やはりそこには..
『...南部監督』
全日本男子バレーの監督である、南部さんだった。
南部監督とは既に顔見知りで、全日本への代表選手としてどうか、と話を持ち出してくれたのが南部監督だった。
南部監督は男子の監督だけれど、全日本女子バレーにも大きく貢献している人。
私が怪我で諦め、それ以降関わりが無かった。
「やはり、佐々木だったか。久しぶりだね、元気だったかい」
『...はい。すみません、せっかく話を持ち出して下さったのに』
「いや、謝らなくていい。仕方のない事だ」
南部監督は、少し考えて、そして私の瞳を見てこう言った。
「ウチのチームに、来ないか?」
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だっちゃん。(プロフ) - いちごさん» いちごさん、ありがとうございます!!新作も更新始めましたので、良かったら読んで下さいね♪ (2015年10月3日 23時) (レス) id: 3d4c419dfc (このIDを非表示/違反報告)
いちご - 石川くんがかっこよすぎて鼻血出そうです笑とても面白い小説で読み返したりしてます!!更新頑張ってください!応援してます!! (2015年10月3日 22時) (レス) id: 0b19d9cc97 (このIDを非表示/違反報告)
だっちゃん。(プロフ) - noenさん» noenさん、ありがとうございます!!頑張って更新していきます(*^_^*)! (2015年9月29日 9時) (レス) id: 3d4c419dfc (このIDを非表示/違反報告)
noen(プロフ) - 面白くてニヤニヤしながら読んでます。私山内さん好きなんですけど、頭くしゃくしゃはヤバいですね。これからも頑張ってください! (2015年9月27日 11時) (レス) id: 8b4359b2e6 (このIDを非表示/違反報告)
だっちゃん。(プロフ) - 黒兎さん» 黒兎さん、ご指摘ありがとうございます!!直させて頂きました、これからもよろしくお願いします(*_*)!! (2015年9月23日 23時) (レス) id: 3d4c419dfc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:だっちゃん。 | 作成日時:2015年9月23日 14時