また会う口実ができましたから ページ7
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返事は期待してなかったが、運良くすぐに『どしたー?』と返信してくれた。
彼女が戻ってくる前に、急いで簡潔に事の始まりを書き込み、最後にもう一度『どうしよう』と付け足して送った。
『山田ったらも〜。急にそんなことになっちゃってどしたの〜。もう可愛いんだから〜』
最高に気色の悪い返信だ。
そしてなんの解決法も言ってくれない辺り、いのちゃんっぽい。
いのちゃんに相談するんじゃなかった。
でも俺には相談できるような相手なんて、いのちゃんくらいしかいない事実に落胆した。
『でも2人の問題だからさ〜。まぁ、流れに身を任せちゃえばいいと思うよ〜』
いのちゃん曰く、そんなたった一言で仲が崩れてしまうなら彼女は俺と結ばれる運命じゃなかったってだけの事だと思う。との事だった。
いや、俺的にはそういう相手じゃなかったとしても崩れて欲しくはないんだけど。
『大丈夫。山田がしっかりその子と向き合えばきっと応えてくれるよ』
でも…今まで女の子と真剣に向き合ってくるどころか半分遊んでいたようなものな俺に、それができるのだろうか。
そう尋ねてみたけれど、いのちゃんは『大丈夫』とただその一言しか言ってくれなかった。
「お待たせしました!」
少しして彼女が戻ってきた。
両手が塞がり開けずらそうな扉を開けてあげると、「ありがとうございます」と言って微笑んでくれた。心臓がはち切れるかと思った。
「とりあえず飲んで落ち着きましょう!」
「ん…そうだね」
ついでにお昼ご飯も注文して、しばらく他愛もない話を交わし、気付くとお昼休みの終わりに差し掛かる頃になっていた。
「…あ、そろそろ行かないとです」
「あ、本当だ」
慌てて部屋を後にし、2人分の会計を済ませて店を出た。
「あの、お金…」
「え、いらないよ大丈夫!」
「で、でもお昼ご飯のお金もあるのに…!」
そんな、ネカフェとかお昼くらい払えなくて男なんて言えない。
だから本当にいらないんだけど、彼女も困った顔をしている。
どうしよう。
「うーん…。あ、じゃあ、代わりに今度俺にもお昼作ってきてください」
咄嗟に思いついた言葉だった。
全くもって釣り合わない話だと思うが、彼女はすぐに「分かりました!」と納得してくれた。
「え、いいの?」
「もちろん!それに、また会う口実ができましたから」
「え?」
「あ、じゃあ私はこれで」
戸惑う俺に、大きく手を振って行ってしまった。
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作者名:L | 作成日時:2021年12月11日 10時