過保護ですね※あなたside ページ15
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完全にノープランだった私は、彼に「どこに行きます?」と聞かれてもすぐには答えられなかった。
とっさに、どうしましょう…なんて笑って誤魔化してみたけど、こういう時って普通はどこへ行くんだろうか。
「あ、水族館行きます?」
「え…今からですか?」
「まだ10時です!全然間に合いますよ!」
ちょうど駅まで向かうバスが目の前の停留所に停車し、早速乗り込んだ。
日曜日だからか、車内は家族連れやカップルらしき人達で少し混みあっていた。
「あ、席一つだけですね」
「Aさん座ってください」
「いやいや…!そこは山田くんが…!」
「いいからいいから」
渋々そこへ座ると、後ろの方からヒソヒソと話し声が聞こえた。
そっと見つからないように視線を向けると、私達と同じくらいの女の子が2人こちらを見ながら何か話していた。
同じ大学の子だろうか。
私の事…かな。
「…やべ、もしかして俺の事かな」
「え?」
「え?い、いや…!何でもないです!」
山田くんも何か心当たりがあるの…かな?
でも、彼のその一言のおかげでちょっと心が軽くなった私がいた。
「よし!行きましょ!」
駅に着き、2人分の切符を購入すると彼はすぐにホームへ向かった。切符代もバス代も、払うと言うのにまた断られてしまった。
ホームに着くとすぐに電車がやってきた。
日曜日だからかやっぱり若者や家族連れで賑わっている。
「離れないでくださいね、絶対に」
並ぶ人達と一緒に私達も乗り込んだ。
既に席は満席で、座れる場所はない。
山田くんは私を反対の窓際まで連れて行くと、誰も人のいない窓の方へ立たされた。
「危ないのでここにいてください!」
「へっ!?」
「何かあったらすぐ手を握って教えてださいね。痴漢でも何でも俺が守りますから」
ち、痴漢ってそんな…。
あいにく山田くんがここに連れてきてくれたおかげで周りは女性ばっかりの安全地帯だ。全然心配はいらないだろう。
でも、そんな心配性な所も彼らしいな。
「ありがとう、山田くん」
「ヘッ!い、いえ!」
すぐに声が裏返っちゃう所も、凄く可愛い。
少しして電車が動き出した。
静まり返る車内の中、それでも山田くんだけは電車が少し大きく揺れる度に「大丈夫?」と振り返ってくれた。
「フフッ、過保護ですね」
「え、え…?」
嬉しいけど、電車乗るの初めてなのかな…この人。
そんなくらいに、彼は電車が目的地へ到着するまでずっと私を心配してくれた。
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作者名:L | 作成日時:2021年12月11日 10時