気弱な僕は、君を描く。 (ページ5)

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3話ページ5

一眼レフのカメラを構えて、シャッターを切る。これで、部員全員を撮った筈だ。そして僕は、目の前の試合に目を奪われた。

…あ、さっきの人。

一心に試合を眺めていると、先程ぶつかってしまったミミズクさんがいた。なんとなくその人をじっと見つめる。すると

「ヘイヘイヘーイ！！！！！」

謎の声をあげて、彼は地面を蹴った。大きな音を立てて飛び上がった彼は、ボールを打つ。

『…凄い！』

高く飛び上がり、打ったボールは誰にも触られずコートに落ちる。物凄い速さで打ちつけられたボール。授業なんかでやったバレーなんかよりも何十倍も凄かった。

僕は急いでまたカメラを構える。

木葉「木兎、ナイスキー！！！」

あのミミズクさん、木兎っていうんだ。…ちょっとまて、2年には木兎さんいないし、かと言って1年には見えない。てことは

『せ、先輩…』

まーじーかーよー。今度会ったら謝ろ。でも本当にカッコいいなぁ。あんなバレー、見たことない。

僕は再度スケッチブックに視線を落とす。鉛筆を持ち、構図を取る。今から描くのは木兎さん。あの人のプレーを、早く絵にしたくてたまらない。夢中で鉛筆を動かして、描き終わった頃には皆帰り始めていた。

木葉「あれ、Aじゃん」

木葉先輩に声をかけられた。

『木葉先輩』

木葉「なぁに、絵、描いてんの？」

『そうです！』

木葉先輩は僕が美術部員ということを知っている。なぜなら数ヶ月ほど前に、僕がつまづいて木葉先輩の前でスケッチブックをばら撒いたからだ。

木葉「見せてよ」

そう言われて僕はスケッチブックを木葉先輩に渡す。木葉先輩は僕の絵を素直に褒めてくれるのだ。

木葉「あ、木兎じゃん！すご…」

パラパラとページを捲る。やっぱり、ミミズクさんは木兎先輩というらしい。すると。

木兎「俺がなにー！！！？？？」

猛スピードで木兎先輩がこちらに走ってくる。木葉先輩の声に反応したらしい。地獄耳。

『！？』

びっくりした…僕はキュッと縮こまる。さっき、ぶつかった木兎先輩。部活が終わってすぐなのに、元気が有り余ってる。凄いスタミナ。

木兎「…あー！！さっきの子！！」

こちらを見た木兎さんが、僕に向かってそう言う。

赤葦「木兎さん、人を指さしたらいけませんよ」

そう言ってまたこちらにやってきたのは

『京治くん！』

赤葦「A！」

京治くんだった。彼とは中学が同じだった。同学年のため、入学式で会った時は互いに驚いた。

赤葦「絵、描いてたの？見せてよ」

そう言って彼も、僕のスケッチブックを除きこんだ。