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「は───？」
気の抜けたような彼の声。こっちを凝視する彼に反して、私は顔を上げられなかった。
「引っ越し……？沖縄を出る……ほんとに？なんで、そんな急に──」
『……急に決まったの。前から決まってたらもっと早く言ってたけど……』
「そういうこと言ってんじゃねーよ!!だいたいオマエ、オレと一緒の中学行くって言ったやし!!」
喧嘩っ早い人だった。でも、私が彼に本気で怒られたのはそれが初めてだっだと思う。
『…………ごめん』
でも今思えば、怒ってるというより、多分、困惑の方が大きかったんだと思う。
ついこの前開けた彼の左耳のピアスが、なぜだか嫌でも目に入った。
彼が私のために背負った痛みを見るのは辛くて、私はまた俯いた。
『約束守れないでごめん、全部嘘になっちゃった。ごめんね、リョーちゃん……』
彼の顔が悲痛に歪む。
『ピアスさ、私が、先生に説明してあげるって言ったのにね』
「……おい、馬鹿。泣くな」
『……私のせいなのに』
「違う!俺が勝手に開けたんだよ!!泣くなよ……泣くなって」
自分で勝手に開けたなんて、彼らしい下手くそな嘘だった。
持ってきたくせに怖がった私の代わりに、彼はびっくりするくらい躊躇わずに左耳を貫いた。
それは多分、ソータを失ってぽっかりと空いた穴の痛みを、何でもいいからとにかく麻痺させたかった気持ちもあったと思う。
でも左耳のじんじんと滲む痛みは、兄を忘れさせるどころか、彼を余計に苦しめたのかもしれない。
しゃくりを上げて泣く私に「泣くな」と言う彼も、鼻を赤くして泣いていた。
『……神奈川ってさ、リョーちゃんでも泳いで来れないくらい遠いのかなあ』
「馬鹿言え、オレは泳いででも行くよ」
『ダメ。溺れ死んじゃう』
「死なねーし」
『……リョーちゃん』
日本の周りの海の名前も知らないくせに。ソーちゃんを奪った海が、まだ少し恐いくせに。
「なぁ──」
『私がいなくなっても、バスケやめないでね』
「……」
彼は確かに何かを言おうとした。
それでも、「さようなら」も「いかないで」も、言わないでほしかった。
彼の最後の言葉を遮ったのは、私の彼への最後のわがままだ。
『やめないでね』
「………やめねーよ」
自分勝手な口約束を取り付けた私に、彼は答えた。
何年経っても、故郷を離れて海を渡っても、絶対に忘れることのできない記憶。
"バスケやめないでね"
それが、私とリョータの最後の会話だ。
✳︎
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玲生(プロフ) - 調べてみたらリョータと同じ市で泣いた (12月10日 22時) (
レス) @page11 id: 7f34fd14ff (このIDを非表示/違反報告)
Uo(プロフ) - なーすさん» ご指摘ありがとうございます…!!腎臓ですね…笑修正しておきます😖 (10月24日 1時) (レス) id: 64806ac4ef (このIDを非表示/違反報告)
なーす - 楽しく読んでおります。でも、２つある臓器は、肝臓ではなく腎臓です(笑) (10月17日 23時) (レス) @page33 id: 10ce8bde32 (このIDを非表示/違反報告)
Uo(プロフ) - 生粋のまよらーさん» コメントありがとうございます❕嬉しいお言葉が励みです😖リョータとの再会は力を入れなくてはですね…!続編もお時間がある時に覗いていってくださると嬉しいです…!! (2023年4月23日 1時) (レス) id: 05f236e790 (このIDを非表示/違反報告)
生粋のまよらー(プロフ) - 最高に面白くて、すぐお気に入り登録してしまいました！！メープルシロップ色の髪と目は最強ですよね……高校に入ったということはそろそろリョータにも会うんですかね？？その時が楽しみすぎて…😭これからも更新頑張って下さい！応援しています！ (2023年4月16日 21時) (レス) id: 3e4069aada (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Uo | 作成日時：2023年2月13日 14時
