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「呼び出してすまないね」
関西で番組収録を終えた私に、橘さんが明日の仕事終わり東京の事務所へ行くようにと伝えてきたのは昨日のこと。
あまりに突然の事務所への呼び出しに、私の頭は色々な想像をしていた。
解散の打診か、退所の打診か。
浮かぶのは、マイナスなことばかりだった。
それでも、事務所に向かった私を待ち受けていたのはいつもいつも私たちを目の敵にしてる、上層部のよく分からないおじさんではなかった。
「…どうしたんです、突然」
「そんな怖い顔しないでよ、ほらとりあえず食べて」
普通、こういう時勧めるのは"飲み物"のはずで
"とりあえず"と勧めるには多すぎる出前が並ぶ机の前の黒革のソファーに腰かけた。
「Youパクチーだめじゃなかった？」
「…それ多分"あっちの"櫻井だと思います」
「そうだっけ」
なんて会話の後訪れる沈黙。
せっかくだし、勿体ないし。
机の上の食べ物は片っ端から食べた。
「相変わらず気持ちいい食いっぷりだねYouは」
「…あ、すいません。で、お話って」
慌てて手を止めた私に、
「食べながらでいいよ」と笑ったその人はこう続けた。
「どうする？
僕はYouがいいならこのままでいいと思ってたんだけど、
うるさいのが多くて、このままってわけにもいかなくなって」
「それは、解散しろってことでしょうか」
暗くなった私の顔をじいっと見たその人は、ただ「Youがどうしたいか聞きたい」と言った。
「…解散は、したくないです」
「そう」
じゃあ、1人で続ける？と聞かれ、それには首を縦に振らなかった。
「4人は戻ってきます」
「でもYouが1人になってもう4年だよ」
誰もが思っている。
4年も帰らない人を待ち続けるなんてバカだって。
私だって…分かってる。
それでも。
「戻ってきます」
「…絶対？」
「絶対」
力強く頷いた私をまたじいっと見つめたその人は、その間ずっと息を止めてたらしくぷはっと息を吐いて呆れたように背もたれにもたれた。
「降参だよ、ほんとにYouたち言うこと聞かないんだから」
「あの、でも会社的には」
「それは心配しないで、僕が何とかしておく」
"約束だからね。
いつか見せてよ、僕が作った5人のCRASHの華々しい復活劇を"
私がその人と会ったのは、それが最期だった。
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作者名：x | 作成日時：2023年9月29日 8時
