方言（sgi side） ページ5
ある日のオフィス。
聞き慣れない声が耳に入ってくる。
「A、めっちゃうまいやん。」
訂正。
声は聞き慣れた、福良の声なんだが、
言葉のイントネーションが聞き慣れないのだ。
「せやろ？これが私の実力っちゅーもんや。」
「それは、コテコテの大阪弁やん。」
話し相手は、どうやらAのよう。
「何、話してんの？」
２人のイントネーションにつられて、
俺も関西弁モード。
「お、須貝さん。
A、関西弁ペラペラでびっくりして。」
「どれどれ、俺がテストしたるわ。」
誇らしげに胸を張るAの隣に座る。
「Repeat after me.
おはよう。」
「おはよう。」
「ありがとう。」
「ありがとう。」
俺が標準語のイントネーションで喋る言葉を
見事に関西弁で打ち返してくるA。
「まあ、これくらいは誰でもいけるか。」
「馬鹿にせんといてー。」
「じゃあいくで。」
服の袖をめくって、更に気合十分のA。
「邪魔すんでー。」
「邪魔するんやったら帰ってー。」
「儲かりまっか？」
「ぼちぼちでんなあ。」
これは、完敗。
「お前、すげーわ。」
「一応これで生まれも育ちも東京で
やらせてもろてますー。」
「あはは、やっば。」
福良も腹を抱えて笑っている。
「意外な特技だね。
結構長いこと関わってるけどさ、初めてだよね。」
福良が標準語モードに切り替わったので
ここからは全員標準語モード。
「いや、最近習得したんですよ。」
「最近？」
「そう、最近テレビめっちゃ観るようになって、
伊沢出てる番組とかにも関西弁使う方いるじゃないですか。」
「確かに、１番組に１人くらいは居るイメージ。」
「かっこいいなって思って、
そこから動画見て、研究したら喋れるようになりました。
今日は関西出身の人と喋って実戦をと思って。」
福良と二人して爆笑。
「お前、暇かよ。」
「暇ですね。」
「それで１本くらい記事書けるんじゃない？
編集部に話通しとくよ。締め切りキツめで。」
「福良さん、鬼。」
鬼と言いながら、
やれと言われればやるのがこいつだ。
「他の方言とかは、話せないの？」
「青森弁？津軽弁って言うんですかね？
訛りがめっちゃ可愛くて、次挑戦しようと思ってます。」
「お、これで１つ企画いけんじゃね？」
福良の表情がプロデューサーに変わった。
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作者名：琥珀 | 作成日時：2024年2月5日 2時
