【QK】Lucky Clover ２ (ページ1)

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涙の理由（izw side）ページ1

正月休みが終わって、仕事も通常運転に戻りつつある。
今日は、１日オフィスで溜まった仕事をするつもりで家を出た。
地方組は帰省を兼ねて長めに休みを取る者が多いし、
何せまだ三が日。
社内の連絡用チャットも動いていないし、
誰か出勤する予定もないようだったから、
静かに仕事をするには絶好のチャンスだった。

なのに、なぜかこの状況になる。

「はあー、むかつくわ…。」

俺がパソコンを広げて仕事をしている横の席で
ティッシュで涙やら鼻水やら拭いている奴が居る。

「まじで、ありえん。」
「俺も、おんなじこと思ってる。」

せっかく1人で仕事に没頭できると思っていたのに、
泣いているAが横に居るのは、本当に訳が分からない。
一応、キーボードをパチパチ叩いてはみるものの
意味のない文字を打っては消し、打っては消しの繰り返し。

遡ること１５分前。
パソコンを起動させ、さて始めるかと背伸びをしたその時、
かちゃっとオフィスの入り口の扉が開いた。
一瞬不審者かと身構えたが、
すぐにそれがAだということがわかり、声を発する。

「あけおめ。」

いつもなら返ってくる声が返ってこない。

「返事くらいしろよ。」

そのまま無言で俺の横の席に座ると、
蚊の鳴くような声で喋り出した。

「何で、伊沢が居んのよ…」

遠くから見ていて、マスクもあって気づかなかったが、
目が赤く、潤んでいて、鼻声。
泣いてるのか…？

とりあえず、手を伸ばしたら届くところに置いてあった
箱ティッシュを手繰り寄せ、差し出す。

「正月早々、どうした？」

聞いていいものか迷ったが、聞かない訳にもいかないこの状況。
Aはティッシュを１枚とって、目頭を押さえた。

「彼氏に振られた。」
「おい、またかよ。」
「私も、またかよって思ってるよ。
　何で振られたらいつも伊沢と出会うんだよ。」
「こっちが、聞きたいわ。」

こういうのが腐れ縁というのか。
俺に与えられた使命なのだろうか。

しばらく、Aが鼻をすする音と
俺のキーボードを叩く音だけがオフィスに響いた。

「いつ、振られたの？」
「さっき。」
「おー、超ホットな話題。
　正月早々ひどいことすんねー。」

黙って仕事を続けようと思ったが、
ずるずる横で鼻水をすすられていては
集中できない。
仕方なく話を聞くことにした。