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残りの順路も回り切って、
少し早めに座席に座る。
今日一日のことを思い出しながら、
ショーが始まるまで待つ。


「はぁー、楽しかったですね。」
「そうだね。」



隣でにこにこしている彼女を見て少し安心する。

彼女から積極的に話しかけて来たり
誘ってきたりすることはほぼないから
前回一緒に帰ろうと誘われた日は嬉しかったのを
覚えている。

でも、デートの約束をしてから今日まで
忙しくてなかなか連絡もとれず
一緒に帰ることもできなかったから
何となく寂しいなと思っていたけど
そんなことを感じているのは自分だけなのかもしれないと
ずっと不安を拭いきれずにいる。



「ふくらさん、お忙しいのに、
 今日は時間作ってくださってありがとうございました。」
「そんな、気遣わないでよ。
 一応、俺ら付き合ってるんだし。」


”一応”と言ってしまって、自分で少しへこんできた。

そんな話をしていると、ショーの開始の時間が近づいてきて
周りも少しずつ騒がしくなってくる。
自分たちの前の列に男女の2人組がやってきて腰掛けた。


「そうですよね、付き合ってるんですよね。
 わたしたち。」


前に腰掛けた2人はカップルのように見える。
ぴったりくっついて座って
2人で1つのスマホ画面を覗きながら
話して、顔を見合わせて笑って、
お互いの肩や腕や手に触れている。



「ふくらさん。」
「ん?なに?」



前の2人から目線を逸らさずに返事をする。

右手の薬指の指輪はペアリングなのか、
キラキラと光っている。



「私…」


彼女の声に被さって、
ショーのアナウンスが鳴り響いた。
言葉がうまく聞き取れなくなって、
彼女の方を見る。


彼女はこちらを見ていて目線が交じり合った。

アナウンスにかき消されていた彼女の言葉だったが
最後の一言は確実に耳に届いた。


「え?」


突然の言葉に驚いて、言葉が続かない。


「…あ、すみません。
 アナウンス、うるさくて聞こえなかったですよね。」


あははと笑いながら、そういう彼女は、
耳まで真っ赤にしている。

どう返そうか迷っていると、彼女は再びこちらを向いて、
ふーっと大きく息をはき、耳元に顔を近づけてくる。

何か言おうとしていることが分かって、
自分からも少し相手に近づく。



「わたし…ふくらさんのこと、好きです。」

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作品ジャンル:恋愛
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琥珀(プロフ) - ユメさん» このシリーズ初めてのコメントがユメさんで、最後もコメントくださって本当に嬉しいです!何とか2人を幸せのスタートラインに立たせれました!そうなんです!首を触る癖めちゃくちゃいいんですよね〜最後まで読んでくださって本当にありがとうございました! (12月16日 21時) (レス) id: 5ab7100f31 (このIDを非表示/違反報告)
ユメ(プロフ) - fkrさんの首に手を当てて話すクセ、魅力的ですよね(完結おめでとうございます! 最後までてえてえたっぷりで大満足です!) (12月16日 16時) (レス) @page42 id: 8ed95612e3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:琥珀 | 作成日時:2023年9月17日 23時

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