負けないために ページ21
邪吐が手を伸ばしたその時だった。
頭ほどの大きさの石が邪吐の右足に当たると、邪吐はついに倒れて動かなくなった。
振り返ると、金髪のツインテールの少女、紫苑が立っていた。
[私だって隠れるだけじゃない。助けてもらうだけじゃ嫌。私も戦うよ]
紫苑は息を切らしていた。
[生きてたのか。紫苑]
立綱のいう通り、俺だって紫苑が殺されたと思っていた。実際紫苑を注意深く見ても血はついていない。
[俺たちは勝ったのか。山神の使徒である邪吐に]
近くの木に手をついた。走り回ったこともあり、足全体がズキリと鈍く痛む。
[帰ったらすぐに寝るか]
立綱が言ったことに俺と紫苑はうなずいた。
______いつ帰るの？
高い少女の声。俺は忘れていたんだ。
邪吐と思われるものが銀色の液体となって地面に染み込むと、そこに銀髪が足元まで延びた、俺たちよりも十歳ほど幼い少女が現れる。
"一之鳥くーん！"
その言葉を思い出した。
そうだった。俺は一番最初の時戻りは少女に殴られたこと。鈍器のようなものだった。
[自己紹介はいるかな？ 私こそ山神の使徒、No.6:山縛の邪吐。正体は美少女ちゃんでした。では、みんなさよなら]
邪吐が笑顔を見せると、体が動かなくなる。縛りの力がこんなにも強力とは思わなかった。
[くそがぁ！ どうして動けねぇんだ]
声が枯れるまで叫んだ。その度に邪吐は頬笑む。瞳を見ると紅に染まっていた。
[面白いよ、ほんと。私を楽しませてくれるね。君は最後。まずはこの眼鏡野郎]
しかし、邪吐は立綱と紫苑の動きを止めようとしなかった。立綱が走っていくと、ある距離で立ち止まる。
縛りの壁だ。邪吐はゆっくりと微笑んだまま歩いて立綱の首をつかんだ。
[うがっ]
苦しそうにもがく。邪吐は背中から桜色の翼を生やして木の上まで昇っていく。
[まずはひとり目かな？ キャハ]
空から真っ赤な雨が降った。足が震えてくる。俺もいつかこいつに殺される。逆転なんてない。
[一之鳥くん。君にどうしても勝つために一言いっておく必要があってね。このままでは君は繰り返して私を倒してしまう。私の姿を見るのは君は二度目のはずだよ]
空から聞こえる邪吐の声。
二度目って一度目の時戻りでは姿まで見てない。こいつは一体なにを言ってるんだよ。
[今度は、そこの女の子だね]
どさりと、立綱であったものを木の上から落として、邪吐は土に足をつけた。
[一之鳥くん、そこで見てな。キャハ！キャハ！]
その笑い声を聞くと頭が痛んだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「オリジナル」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆい(プロフ) - norio117さん» いつでも返信します！評価、ありがとうございます！ (2018年8月2日 13時) (
レス) id: bf5077db51 (このIDを非表示/違反報告)
norio117(プロフ) - ゆいさん» ありがとうございます！ (2018年8月2日 13時) (レス) id: bd732d3351 (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - norio117さん» 凄く引き込まれるようなお話でした。 また、文章とか分かりやすくて、素晴らしかったです、タイトルから話まで興味をそそる内容でしたので読ませていただきます。作品の申請お忙しい中、ありがとうございます！ (2018年8月2日 13時) (レス) id: bf5077db51 (このIDを非表示/違反報告)
norio117(プロフ) - オリジナルです。 (2018年7月18日 18時) (レス) id: bd732d3351 (このIDを非表示/違反報告)
米子(プロフ) - アイカさん» ありがとうございます。せっかくアイカ様にいただいたものなので、伝説に残るようがんばります (2018年6月27日 18時) (レス) id: fa2781bdc8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：海苔男 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/my.nori118
作成日時：2018年6月17日 22時
