176# 強がり ページ26
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真実を伝えて、思い浮かんだのは二つ。「どうして黙っていた」と怒鳴られること。もしくは沈黙である。
……だって、たかみなさんのステージに立ちたいという強い思いは、キララさえ引き寄せるほどにまばゆい。
優子さんたちも見たならわかるはずだ。DESが00の捕獲を目論んでいることを知らされたときも、凍原星に到着前に襲撃されたときも。たかみなさんはファンのために戦ってくれた。誰よりもAKB0048という人だった。
そんな人が5代目たかみなとして、最高のステージを届けると、必死な声で悲願していたなら。
「本当にすみません……すぐ医務室へ運ばないと」
「っ、そうだね。彼方、頼んだよ」
「はいっ！」
雪をはらい落とし、彼方さんは彼女の肩と膝の裏に腕を通す。俗に呼ぶお姫様抱っこ。小柄なたかみなさんと、研究生の中では最も力がありそうな彼方さん。絵になるなんて呑気なことを思っている場合では無い。反省しないと。
彼方さんが踵を返す直前「まだアンコールが残っている」とたかみなさんが言った。
体はとっくの昔に限界のはず。それなのに、まだステージやファンのこと。そんな彼女に、優子さんは「バカ、こんなときはもっと仲間を信じろ！」と叱っていた。
「おーし、みんなー！ たかみなの分も、アンコールぶちかますぞー！！」
「「「おー！！」」」
「Aも、彼方の分までアンコールも頼むよ！」
「っはい、もちろんです！」
彼方さんと共にLASに消えそうなたかみなさん。優子さんの肩にゆきりんさんが手を置く。それに彼女は更に自分の手を重ねた。何かを決めたように後ろのメンバーへ振り向くと、天に拳を突き上げて今一度気合いの一声。
想いは同じ。確認すると、今度は私と目を合わせてきた。やばい、やっぱり怒られる。そう思ったのに思ってもみないことを言われて慌てるままに返した。
ファンが待っててくれている。ステージへ戻ろう。私もLASへ再び乗って持ち場へ戻るんだ。そうしようとすれば背後から「A！」と呼ばれた。この声は才加さんだ。
振り返ったらもう目の前まで来ていて。才加さんはおもむろに手を伸ばしたかと思えば、私の頭を撫でた。グシャグシャにされそうなイメージがあるのに、その手は酷く優しい。
「優子、怒ってないよ。大丈夫」
「……何も言ってませんけど、」
「強がりだなあ。アタシの前でそんなのいいのに」
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2022年10月21日 14時
