152 ページ2
▼
「言われたときは動揺したけど、今はそこまで気にしていませんよ。私は恵さんや織音たちと違って誰かと一緒に襲名したいとか思いませんし。だから、あなたの気持ちはわかりません」
「ボクをあんな子たちと一緒にしないで！」
むかつく。気に入らない。後輩のくせに。仲間に先を行かれる。置いていかれる。離れてしまう。ボクが、ボクたち76期が今までどういう思いで研究生を続けてきたか知らないくせに。
ここまで言っても涼しい顔のまま、視線をそらさない。研究生はどこまでいっても襲名の下。同じにはなり得ない。はあはあと思いの丈をぶつけ終わると、Aはやっと口を開いた。
「そうですね。でも私は今のポジションを自力で取りましたよ。私が襲名の周りにいるのが嫌なら、恵さんが奪うつもりでもっと頑張ったらどうですか？」
「は………」
「私は沢山の人に自分を知ってもらいたいです。愛してもらいたいです。そのために努力をしています」
早朝から才加さんと体力作りのランニング。DES兵との戦闘で戦力になるために、佐江さんとともちんさんに体術の教えを請う。モデルのお仕事のためにこじはるさんにポージングを教わる。わからないことがあったらそのままにしないでたかみなさんに相談する。……
才加さんと優子さんの勧めもあり、最近はLAS部隊にも出入りをしているらしい。本来は襲名してからの機体の操縦も教えてもらったとか。
そういえば、と話し始めたのは例の休養日のこと。あれは握手会のために神対応と評判のゆきりんさんに話を聞きに言っていたらしい。もっちぃさんやらぶたんさんはその練習に付き合ってくれていた、と。
「ツバサさんの指示は正しい。智恵理のときもそうです。同期の襲名に囚われて停滞している先輩たちに妬まれたり、77期を生意気だと思われたくありません」
「っ！！」
「メグ！」
ボクだけなら、まだいい。でも76期のみんなまで悪く言うのは許せない。ボクは右手を振り上げた。77期がボクに説教？ これ以上聞きたくない。Aの顔を見たくない。
けれど、ここを超えたらダメ。叩いちゃダメ。なけなしのストッパーとヨーコがボクを引き止めている。
こんな事態になっても、Aはボクの方を見ていた。怖がったり驚きもしない。ここまで顔色を変えないなんて、読めないを通り越して変である。
「叩きたいならどうぞ」
「ちょ……Aも煽らないの！」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 60人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：東雲れーた | 作成日時：2022年10月21日 14時
