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「よろしくね、モフフ」
「モッフ〜！」
和気あいあいとした空気。その中で言えるほどの度胸は生憎持ち合わせていない。私たちはそのうちこの惑星を去るの。名前をつけたら別れがより辛くなるだけだ。なんてね…………ん？
後ろを振り返る。だが、変わった様子はない。みんなから少し離れて森を凝視してもだ。キノコしか無いよなぁ。
「ルリー、」
「ゆいはんさん」
「どうしたん？」
「……なんか、見られていたような気がして」
刺すような視線を感じた。かつて、うちの母親が私を見ていたあの目。こっちの動向を見張るような、私に不満があるような。そのときの感覚に似ていた。色んなことがあったし、過敏になっているだけ？
ゆいはんさんも私が先程まで見ていた方向に首を回す。しかし結果は同じ。特に気になるようなものは無い。直感と理論なら、私は間違いなく理論で物事を判断するタイプだ。使える根拠を取り上げ、説得力で相手をねじ伏せる。
……だから、今では珍しいんだ。私が感覚という曖昧なものを体験したときは、大抵は気のせいじゃないから。横目で楽しそうな同期たちを一瞥する。見知らぬ星と、未知の生物。なのに警戒心の欠けらも無い。俯くよりは良いと思うが、それもどうだろう。
水を差すようなことは言わないでおくか。ゆいはんさんも、あくまで私が感じたことなので報告は任せます。気を張ったままでは全然休まらないでしょ。ま、どちらにしても研究生には言わない方がいいかと思う。
「ルリーも研究生やんな？」
「そうなんですけどね。私……妹がいるんです。姉なら下の子を守らなきゃいけないって、そういうのが働いてしまうんでしょうか」
「……そん心は？」
「見えない脅威に無駄に騒がれるのが面倒なので」
「正直〜」
あながち建前でもないけれど、本音もすぐに吐かされてしまう。ゆいはんさんはケラケラ笑ってる。楽しそうでなによりです。こんなに高らかな笑い声を今日聞けるなんて思ってなかったな。
もし、もしも。私が何かを感じたことが本当なら。交代で睡眠を取った方がいいかもしれない。それこそ、ほんまに鬼が出たら嫌やしな。用心に越したことはないと、ゆいはんさんは「とりあえずたかみなとツバサはんに提案してみるわ」と踵を返して行ってしまう。
また一人になる。背中を見送ってから、視線を感じた方向へ戻した。……何も起きないといいけれど。漫画とかだと、こういうのがフラグ回収になるんだよな。
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2023年10月22日 13時
