684 ページ34
▽
佐江さんの了承は一応得た。たかみなさんと才加さんにも見守られ、四人だけの空間。コホン。では失礼して、
「みんなに共有してたときDESに見つかったじゃないですか。……で、みぃちゃんがLASで応戦してくれて」
「うん」
「佐江さんは『逃げた』と言いましたよね。私あの最中で実はこう思っていたんです。……佐江さんにみぃちゃんの何がわかるの？ 何も知らないですよね」
熱海星の撮影のとき佐江さんは気づいていなかった。寮には歴代センターノヴァの写真が飾られ、彼女のものも当然並んでいる。佐江さんはひとつ先輩で、まだ一年半くらいしか在籍してないけど。それでも襲名してるんだ。
私の理想かもしれない。だが、故郷である
それでもみぃちゃんを知らなかった。まあ中にはいるよね。彼女はもう過去の人だ。それも事実だから。私が言いたいのはそんなことじゃない。それならそれとして。
「名前と、センターノヴァだったことだけ。みぃちゃんがどんな人で、何が好きなのか。一ミリも知らないのに憶測で物を語りましたよね。『そういう人』と見なし、感情のままに口にした。研究生の憧れの存在である方が『悪い』と言えば、私たちは『だよね』しか言えない。あの言動はやめた方がいいかと」
「A、意外と怒ってたんだ」
「だから怒ってませんって。……今は」
私、本当は彼方さんがみぃちゃんに食ってかかったときからふつふつと込み上げて来ていたの。佐江さんのあのときの言葉は引き金となっただけだよ。佐江さんだけに言うなんて間違ってると思う。
けれど、彼方さんは繊細だからなぁ。今後調子を崩すリスクと天秤にかけたら、あの人には言わない方がいいというか。仲間割れもしてる場合でもないし。まあ彼方さんと凪沙には強い口調で責め立てたことだけでもちゃんと謝ってほしい。私、全然許してないから。
「私は一見、公私混同に見えるかもしれません。彼方さんに言わせれば『推しメンに肩入れ』『庇いたいだけ』だそうです。でも、それは有り得ないんですよ」
「なんで？」
「例えばたかみなさんが何かしたとしましょう。私は原因究明には力を貸しますが、日頃お世話になっている貴方を庇うことを絶対にしません」
「お、おう……」
恩を仇で返すのかと言われてもね。情で判断するなんて冷静とはかけ離れた行為だもん。恋は盲目。それと同じだ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 22人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：東雲れーた | 作成日時：2023年10月22日 13時
