667# 信じる理由 ページ17
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すっかり呼吸が整った咲和先輩へ、ツバサさんから通信が入る。みぃちゃんと話したAたちと少し話し、艦長室に戻ってきたらしい。オペレーターが少し前から、秋葉星にいる先聖センセイと交信を図っていたらしい。
しかし、期待通りにはいかず未だに応答無し。また筑波財団やWOTAの各支部にも繋がらないとか。
「そういえば……瑠璃はWOTAと知り合いだよね。そこからも連絡はできないの？」
『あ、それならさっき話すついでに訊いたわ。避難民のこともあるし、支援物資を秋葉星へ届けるようにメッセージを送ったらしいの。改めて連絡するとなると、もし近隣宙域にいるとDES軍にGPSを辿ってこの場所を知られる恐れがある』
「なるほど。やめた方がいいね」
アタシたちは打つ手なしってこと？ リスクがあるのは、フライングゲット号からの交信も同じこと。『そろそろ危険ね、終えて』というツバサさんの声を最後に、こっちも通信が途絶える。
先輩は顔を洗ってからツバサさんたちのいる艦長室へ顔を出すらしい。……アタシたちはどうしよっか。とりあえずメンバーのところへ戻る？ 先輩に撫でられたために少し乱れた髪型を手櫛で整えながら、ゆいはんは頷いた。
「二人ともありがとう。私は卒業しちゃったけど……今でもあんたたちの憧れの人でいたいと思ってる。なのに、情けない姿見せちゃった。本当に冷めてない？」
「「そんなこと、ありません／あらへん！」」
よかった。現実は笑ってる場合じゃないけれど、先輩がまた笑顔になってくれて本当によかった。だって……少なくともアタシたちにとっては、咲和先輩のその顔こそが希望だから。諦めない、頑張ろうと思わせてくれる。
ゆいはんも方言が出て、だいぶ砕けた口調だ。こんなふうに話していると当時に戻ったみたい。咲和先輩がアタシたちのダンスコーチになってくれなかったら、こうなることはなかっただろう。
「ダンスかあ……」
「どうしました？」
「いや、ね。ちょっと思ったの。自分じゃない自分、もうひとつの名前って運命とも呼べるかもなって」
オリジナルの優子はグループで抜群にダンスが上手い。もちろん、そう言われたメンバーは他にもいる。……けれど、その「他」も上手さを認めていたらしい。
「私が8代目大島優子だったのは、絶対に変えられない」
「？ はい」
「美果子は宣言して勝手に出ていっただけ。一度受け継いだ名前と志を捨てるのって、そんなに簡単じゃないよ」
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2023年10月22日 13時
