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呼吸を忘れていたのは、ツバサも。一分も踊っていないのに息を切らしていた。肩を上下させるところへ本宮が駆けつける。
たとえ奇跡を起こせてもこれが現実。スタミナやセリーでの体幹維持など、何年も前にサポート役にまわった奴にはそれ以外の問題が山積みだから。最初から分かっていたこと。
「私じゃ……、もう無理なの」
ツバサだけじゃない。私や美果子だって。
卒業後も、たしかにメンバーの前でキララを輝かせたかもしれない。だけど再びステージに立つことはできないの。愛を届けるために歌って踊るのはどうしたって不可能。
「お願い」
「！」
「貴方たちにしかできないのよ……！ 秋葉星を……、みんなの笑顔を救って……！」
泣きそうな顔と思った矢先、彼女の頬には本当に涙が流れた。この姿に心が打たれない奴がいるなら、私はそいつを軽蔑する。仲間とは到底認めない。
私たちは何も変わらないの。00を去り、次に名前を継ぐメンバーが現れてもね。背中を丸めるツバサに美果子が歩み寄る。本宮の足元で止まってから、今の00メンバーを見渡して言った。
「みんなも見たよね！？ ツバサのキララの輝き！ とっくに00を卒業して何年も踊っていないツバサだって、キララを輝かせることができる！ それができたのは……願いも思いも越える、強い想い！」
「強い想い……」
アイドルを辞めても秋葉星を出ても、好きな気持ちは変わらなかった。アイドルだからこそ辛いときもあったけれど根っこは同じ。卒メンにとっても秋葉星は大切なの。
家族と離れて青春を過ごした、かけがえのない場所。それなのに自分では救えない。できることしかできないんだ。絶対に失いたくないのに。
他にも沢山の人たちの願いを背負う。プレッシャーすごいよね。本当にできるのかってなるのも分かる。頑張ってもダメ出しばかりだし。でも、芸能がこの世から消えるなんて真っ平ごめんだから。
「現役のアンタたちがやれなくてどうすんのー！？」
「みんなにしか、じゃない。みんなならできるよ。会ってまだ日は浅いけど、本当にそう思う。だから見せてよ、今の00の最高の輝き」
「咲和に言われてやる気にならない奴なんている？ いないよね！？」
「そうよ、できるわ！ ババアのツバサもここまでできるんだから！」
【大島優子】の能力はどれも高く、襲名の名前の中でもトップクラスだ。自分で言うのもなんだが、かつてそう呼ばれた私に認められるのは大きな意味を持つ。
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2024年3月16日 19時
