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本来、00は上下関係が厳しい。それは過去のAKBからだと鈴子が言っていた。たとえ歳下でも先に入った者が先輩である。ゆいはんさんも、襲名したての頃は歳下の先輩にも敬語を使っていたと聞いた。
それと比較したら楚方の普段の接し方は異様だ。まあ……彼女もまたイレギュラーで研究生になったし、才加さんたちも特に咎めたりしない。流れで許された感が否めない。
ま、天真爛漫で明るいところが楚方の持ち味だ。注意したらそれを殺してしまうかもしれないし、私たちには今更でもある。けれど多分、その点も当初76期生によく思われていなかった要因なんだと今では思う。
「あれは、私も近くにいることを知ってほしかったから。信じてほしかったから。線を取っ払うことで、これからもみぃちゃん推しだって彼方さんたちに知らせるため。………ちょっと重い？」
「うーん、でもそれ以上に嬉しい気持ちが勝つかな。……あなたは今の仲間よりもあたしを大切にしてくれた。あの場であたしの味方をしたって良いことないってのに」
えっ？ あるんだけど。ていうかプラスしかないでしょ。そのまま口に出せば彼女は目をぱちくり。そんな驚くか？
信用を辞めてしまった場合の方が私にはデメリットだ。5代目峯岸みなみは私の原点。みぃちゃんに、誰かを好きになる気持ちを教えてもらった。自分の世界の外側は広くて、素晴らしいものがたくさんあった。彼女がいなかったら私は今ここにいないだろうし、そもそも性格なども全然違う人間になっていたかもしれない。
変わらないよ、ずっと。推しメンとカメラマンの南野美果子さんは同じ貴方。いつまでも大好きな人なんだ。
「それに、良いことならあったよ」
「えっ？」
「私はみぃちゃんを失わずに済んだ。たかみなさんが、後悔することはなくなった。それに……言ってた。たかみなさんはお二人が笑い合う姿をもう一度見たかったんだって」
「…………！」
「それと、自分や先生だけじゃない。秋葉星にいるしーちゃんさんの大事な人を守れて本当によかった、ともね」
彼女の瞳が揺れる。この場がシーンとしてるから聞こえた、微かな「しーちゃん……」。ぽつりと落ちる。みぃちゃんは膝の上に置いていた両手をぎゅっと握った。
ふいと目を逸らされ、彼女は少し俯く。……どうやら一方通行じゃないらしい。以前、しーちゃんさんが仲良し同期四人組を最高の仲間だと言っていたように……。みぃちゃんも、おそらく想いは変わっていない。
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2023年11月16日 23時
