ぬくもり Ⅰ (ページ27)

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「おう，櫻井ぃー。おっはよー。」

笑顔で大沢くんがきたときは，嫌な予感がした。

ものすごく。

「お前さー。ちょっと今日はトイレ来いよー。」

「……とい，れ…?」

「ほら，最近天気悪いでしょ?だから，櫻井もぬれてたほうがいいかなーって思って。」

「理屈が意味わかんねぇー。ま，おもしろいからいいけど。」

取り巻きの男子も笑っている。

そればかりではない。

女子も哀れむような視線で俺を見ていたり，
くすくす笑っていたり…。

「はぁっ…ぅ…。」

荒くなる息。うめき声。
なんとか耐えながら，授業を受ける。

背筋がゾクゾクしてきて，体を小さくした。

熱が…上がってきて…な。

そう実感するほど，体は熱くて，息も苦しい。

顔を伏せると，腕に伝わってくる体温が熱くて，
体がしんどい。

・

どのくらい，そうしていたのだろう。

きつい…辛い…。

そんな言葉が頭をグルグルまわっていたとき。

バンッッッ

机を思い切り叩かれる音。

はっとして，顔を上げる。

「おい，櫻井。お前今，寝てただろう。」

「…あっ，いえ…あの…。」

「生徒指導室行きたくないなら，ちゃんと真面目に授業を受けろ。」

一瞬先生と目があって，逸らされた。

クスクス聞こえる笑い声。
みんなの視線。

全てが，俺の心に突き刺さってくる。