〆29:速足で ページ31
そうして、無理やり腕をつかんで「待って」とも言えなかった、分かれ道。
オレは彼女の背中を静かに見送ってから、しばらくたってようやく足を動かした。
今回の初デートでわかったことがいくつかある。
彼女が好きなものは、水族館と蕎麦と雑炊。
嫌いなものは、手をつないだり、束縛されたりする……恋人のような時間と空間と、「ぬくもり」だ。
黄瀬「……『俺が恋を教えるから』……かぁ」
昼時に自分が言った言葉を、小さくつぶやいて、ため息をつく。
俺にそんなことできるのだろうか。
俺だって、恋愛がどういうものかわからないのに。
俺だって、恋したことがないのに。
・
彼女と少しの間つないだ手を、じっと見る。
彼女は「邪魔」だといった。心底いやそうな顔だった。
でも、俺は……あの冷たい手を、邪魔だとは思わなかった。むしろ、ずっと握っていたいと思ったのだ。
彼女の……ぬくもりとも言えないほどに冷たい、「ぬくもり」を。
離したくないと思ったのだ。
黄瀬「……俺は、『恋愛感情がない』わけじゃない」
だから、きっと。
彼女を好きになるのも……時間の問題かもしれない。
いや、もう、好きになりかけているのかもしれない。
彼女とわかれてからの喪失感が、俺にそう告げていた。
・
・
日付は変わって、登校日となった。
彼女とクラスの違う俺は、朝も昼も彼女を見つけることができない。
休憩時くらい一緒にいてもいいと思うのだが、
その時俺は彼女以外の女の子たちに囲まれてほとんど身動きが取れないし、
彼女の性格だ。きっと、「理由もないのになぜ一緒にいなきゃいけないんですか」と冷めた目でいうのは簡単に予想できていた。
そして、待ち遠しかった放課後。
SHRが終わると同時に、俺は体育館に駆け出した。
彼女は今、小説の題材となっている帝光のバスケ部に取材をしたり観察をしたりしている。
だから、唯一彼女に会える時間なのだ。この放課後は。
急いで着替えて体育館へ息を切らしていけば、メモ帳を持った彼女がほんの少しだけこちらを見る。
ものすごく久しぶりに見るような気がする、その茶色の髪と、青い目。
俺は、それにひきつけられるように、彼女のもとへあゆみよった。
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鎖月零(プロフ) - Flower*さん» コメントありがとうございます!一章は割とラブコメしてますwあの塩しかないツン99%の琥珀ちゃん可愛いとは!変わり者ですね!?((頑張ります! (2017年6月30日 12時) (レス) id: e5c976073b (このIDを非表示/違反報告)
Flower*(プロフ) - 今、一章のほうを読み終わりました!めちゃくちゃ面白いです!塩対応夢主ちゃん、可愛すぎます。続きがきになりますね( *´艸`) これからも頑張ってください!! (2017年6月30日 0時) (レス) id: 4d95f4e8a2 (このIDを非表示/違反報告)
鎖月零(プロフ) - xx00xx4280さん» ありがとうございます!伏線回収まで時間かかりそうですが、なんとかいいエンドをつづれるように頑張りますので、今後もよろしくお願いします!! (2017年4月26日 16時) (レス) id: a33d034fdf (このIDを非表示/違反報告)
鎖月零(プロフ) - ねこ汰。さん» コメントありがとうございます!きゅ、キュンキュンしますか?うれしいです。少女漫画のノリを目指しているので!更新頑張ります! (2017年4月26日 16時) (レス) id: a33d034fdf (このIDを非表示/違反報告)
xx00xx4280(プロフ) - お上手です!伏線を回収して上手くエンドを迎えられるようにお祈りしております。 (2017年4月9日 21時) (レス) id: ceb43f3a9d (このIDを非表示/違反報告)
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