〆28:上機嫌 ページ30
俺が気にしすぎなのか
それとも彼女が気にしなすぎなのかわからないけれども。
彼女は俺が「かわいい」と言っても無反応。
恋人っぽい接触行為をしたら、むしろ嫌そうな顔を全力でする。
いままでにいる女の子と違う、と今まで思ってきたけれど
もしかしたら彼女はいままでに会ってきた「人間」とは違うのかもしれない。
黄瀬「蕎麦、美味しかったっスか?」
口が滑って言った「かわいー」発言がスルーされた俺は、
その後その発言に弁解することもなく蕎麦を食べ終えた。
自分が悪いのは承知だが、なんとなく先程の発言で疲れた気がする。
そんなオレの疲労の原因であるAはというと、
俺の目の前で満足そうに手を合わせていた。
A「はい、ここのお蕎麦は絶品でした……!天ぷらも、桜と抹茶の塩どちらも相性がよくて、個人的にはカボチャが美味しかったです」
上機嫌、だ。
此処の蕎麦粉はどこのですかね?とか、休業日はいつだろうとか、天つゆをちびちびと飲みながら喋っている。
あまり動かない表情筋が、ようやく仕事をしたようで
花が綻ぶように笑ってはこちらに話しかける。
こんな表情の彼女をみて、可愛いと思わないわけはない。
これは俺が彼女に惚れたとかそういうのじゃなくて、
普通に、一般的に、これは可愛いのだ。
男なら、いや、女でもこの表情の彼女は可愛いと思うはずだ。
そのはずだ。
A「黄瀬、ありがとうございます。今日1日楽しかったです」
上機嫌だからか、彼女は素直に俺を見つめながら言った。
この表情を生み出したのが「蕎麦」だと思うと俺が負けた気がしてならない。
俺はただ一言、「よかったっス」と言ってから、珍しくコロコロと変わる彼女の表情をずっと眺めたいた。
・
・
そうして、蕎麦屋を出た先で彼女は「では、」と小さく言って踵を返す。
ああ、帰っちゃうんだな。……と、どこか寂しく残念な気持ちがぶわ、と溢れ出す。
衝動的に彼女の腕をとろうと手を伸ばしたが、
彼女はそれをするりと避けた。
A「今日はぼーっとしていたので、休んでください。見送りはいいですから。」
彼女は、俺とこれ以上同じ時間を共にすることを望んでいない。
もちろん、言葉の端から俺を労る気持ちが読み取れたが、
それ以上に拒絶の言葉が表にでていて、俺は出された手をゆっくりと引き戻したのだった。
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鎖月零(プロフ) - Flower*さん» コメントありがとうございます!一章は割とラブコメしてますwあの塩しかないツン99%の琥珀ちゃん可愛いとは!変わり者ですね!?((頑張ります! (2017年6月30日 12時) (レス) id: e5c976073b (このIDを非表示/違反報告)
Flower*(プロフ) - 今、一章のほうを読み終わりました!めちゃくちゃ面白いです!塩対応夢主ちゃん、可愛すぎます。続きがきになりますね( *´艸`) これからも頑張ってください!! (2017年6月30日 0時) (レス) id: 4d95f4e8a2 (このIDを非表示/違反報告)
鎖月零(プロフ) - xx00xx4280さん» ありがとうございます!伏線回収まで時間かかりそうですが、なんとかいいエンドをつづれるように頑張りますので、今後もよろしくお願いします!! (2017年4月26日 16時) (レス) id: a33d034fdf (このIDを非表示/違反報告)
鎖月零(プロフ) - ねこ汰。さん» コメントありがとうございます!きゅ、キュンキュンしますか?うれしいです。少女漫画のノリを目指しているので!更新頑張ります! (2017年4月26日 16時) (レス) id: a33d034fdf (このIDを非表示/違反報告)
xx00xx4280(プロフ) - お上手です!伏線を回収して上手くエンドを迎えられるようにお祈りしております。 (2017年4月9日 21時) (レス) id: ceb43f3a9d (このIDを非表示/違反報告)
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