【黒バス】この恋人は恋愛感情がない。１【黄瀬】

〆21:意外な一面 ページ23

なんというか。



すごく、意外だった、としか言えない。




オレの想像の中では、彼女はこの水族館を彩る無数の魚を見て、「美味しそう……」というと思っていたのだが、



実際の彼女といえば、水槽にそっと手を置き、
キラキラとした目でその青い水や魚を凝視している。




A「……っ！」




魚がこっちにくると、パッと顔をあげて無言で喜び、




A「……」




それらがフイ、と顔を背けて向こうへ行けば、しゅんと顔が少しだけ陰る。




しかし、その喜びや悲しみは全部無言で。

彼女の顔を凝視していないとわからないほど微妙な変化だ。



でも、オレにはその隣にいるカップルの女の子のように、「みてみて、このおさかなさんめっちゃかわいいー！」というより、


こうして静かに小さく喜ぶ彼女のほうが、何倍もかわいく見えてしまって。




黄瀬「……オレ、ホントにどうしたんスかね……」




A「……？黄瀬、どうしました？先ほどから魚を見ていないようですが」




黄瀬「え？そ、そんなことないっスよ！！……あー、この魚かわいいっスね、ニモみたいな？」




A「……はいっ、こ、こっちに来ましたよっ」




少し興奮気味にそういうと、彼女はちょっとだけオレの服の裾を引っ張る。


そして、水槽におそるおそる指を近づけていた。




魚はその指にゆらゆらと寄っていき、水槽をつつくようにこちらに来る。


その様子に、Aはまた目を輝かせ、何も言葉を発せずに喜んでいた。




黄瀬「……かわいいっスね」




A「はい……っ！」




彼女はオレの視線に気づかずに、魚を凝視したまま返事をする。


その様子に小さく笑って、


彼女の小さな手を、そっと握ったのだった。

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