【黒バス】この恋人は恋愛感情がない。１【黄瀬】

〆16:車の男 ページ18

そういって体育館をそそくさと出て行ったAを、
俺は部室から荷物を取った瞬間に着替えもせずに追いかけた。


汗だくになって、一目散に校門に向かって走っている姿を、とおりすがる女の子たちはぼうっとした目で顔を赤くしてみている。


そう、これこそが「正解」でこれこそが女の子の反応だというのに


Aといえば、この俺の姿をみても無反応どころか興味もなさそうだった。


もちろん、そういうところが気に入っているのだが、
あまりにも無反応だとちょっと女の子にモテると自称している以上、少し気に食わないのも事実だ。


肩で息をしながら、どうにか校門まで駆け寄る。



黄瀬「A！……本当に帰りやがった……！」



名前をもう一度呼んで、あたりを何度も見渡す。

彼女の姿らしいものがないが、俺は彼女の帰る方向に駆け出した。



黄瀬「ホントに歩くの速すぎでしょ……！！」



そのまま走り続けていると、ようやく彼女の後姿が見える。


ただ、そこにいたのは彼女だけではなかった。



Aは車を乗った男と話していたのだ。




黄瀬「な……っ！」



思わず声をあげる。

視線の先の彼女は、その車の男の誘いに乗るように、ひとつ頷いたのだ。



俺はその後ろ姿に無我夢中で駆け寄ると、車に乗りそうになっていたAの腕をつかむ。




A「……え？」



黄瀬「お、俺の誘いは……っ断るくせに……そんな、やつの……誘いはのるんスか……！？」



A「……は……？」



黄瀬「アンタは、俺の……彼女でしょ！？」



腕を強い力でつかみながら、俺は息のあがった状態で怒鳴りつける。


彼女はというと、俺の言葉に目を見開いてから、少しだけ眉をひそめた。



A「……あの、何か勘違いしていませんか」



黄瀬「は……？」



少しムッとした表情の彼女が俺に抗議するように口を開く。

今度は俺がきょとんとする番だった。



眉をひそめた顔の彼女に、きょとんとした俺が無言の空間を作る。



シンと静まったその場の空気を割ったのは、車の中の男だった。




「おい、A。……ソイツは？」



白髪の煙草を吸った男だ。


いかにもナンパしそうな感じの。



俺はソイツをぎろりとにらむと、Aはその視線を遮るように、彼の前に立った。



A「この人が、例の……」



と、彼女がぽつりとつぶやいた後、俺は車の男に車に無理やり乗せられたのだった。

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