二人 ページ50
「俺はてっきり、後五十年は会えねぇと思ってたんだがな、」
そう話す目の前の男は確かに自分の夫だった男。
「本当に東さんなの？」
「当たり前よ、こんな良い男二人も居ちゃ困る。」
砕けた物言いに粗野な部分のある所作、本当に彼だ。
「東さん、私あなたに謝らないと……。」
いけない、その声を出す前に強く抱き締められた。
「志保、よく頑張ったな。お疲れさん、」
「私、焔ビトに見えてます？」
「まさか、ちゃんと綺麗な志保だぜ。」
「じゃあその言葉は何故？」
焔ビトの鎮魂の時に東が言う言葉を投げられる意味が志保には分からなかった。
「俺の精一杯の労いの言葉だ。志保には俺が先に死んじまったせいで苦労を掛けた、」
申し訳ねぇと酷く小さくなって東は言う。
元々、上背のある男のそれはなんとも情けなかった。
パンっと志保は両手で優しく東の頬を包む。
「止めてくださいな、あなたは悪くない。」
「人を救う職務を全うしたあなたはとても立派です。」
頬を包む志保の両手に東の両手が重なる。
「志保も悪くねぇよ、立派だ。」
「Aを女手一つでよくあそこまで育ててくれた。」
二人は当てもないままに歩き始めた。
当てはないが、行かなければいけない場所は分かっていた。
「今でも私のことを愛してますか？」
「当然だ。これからもずっと愛してる。」
青く広い空に生涯の二人は溶けていった。
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ウォールナット(プロフ) - イッヌの毛さん» コメントありがとうございます！とっても励みなります。更新頑張りますね。 (2020年10月22日 19時) (
レス) id: 566bbd72fa (このIDを非表示/違反報告)
イッヌの毛 - 面白いですね！更新楽しみにしています！ (2020年10月22日 16時) (レス) id: e2d97a71dd (このIDを非表示/違反報告)
ウォールナット(プロフ) - 外し忘れていました。教えてくださりありがとうございます。 (2020年10月9日 19時) (レス) id: 566bbd72fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ウォールナット | 作成日時：2020年10月9日 16時
