Prenez l'aiguille ページ1
イルミside
その日は月が眩しい夜だった。
ある小高い丘に立つ屋敷に住む一人の男を殺してほしい。それが今回の依頼だった。
結構大きい屋敷で、ターゲットにたどり着くまでに関係のない使用人達も殺すことになったけど、致し方ない。
つつがなくターゲットまでたどり着いたあとはいつもの通りだった。首筋に差し込んだ針を抜き、軽く血を払う。手慣れたその動作になんの感情も抱かない。今日も、明日も、数年後だってそれは変わらない。
「頼まれた仕事、終わったよ」
『あぁ、ご苦労だった』
簡単な電話。任務完了を親父に連絡し終え、ふと足元の死体を見る。男は首からペンダントをかけていてその中から一人の女の写真が覗いていた。
大切にされていたであろう男が殺されたことにも気づかず、写真の向こうから笑いかける髪の長い女。
死体から目を離し、携帯を閉じると部屋からは完全に明かりが消えた。
不意に頬に風を感じた。その瞬間。
「これ、全部貴方がやったの？」
背後で突然響く、高く澄んだ声。
振り向くと無造作に死体が転がる中、そこに立っていたのは一人の少女。
殺気などは感じられない。ただ、いつの間に其処にいたのか気配に全く気が付かなかった。
数秒、だったのかそれ以上か、動くことができなかった。問の意味も頭の中でまとまらず、目の前の少女を見つめることしかできなかった。
死体の転がる中こちらを見据える少女に何か異端なものを感じて、目を離せずにいた。
そしてその理由に気づいた。
白い、のだ。彼女が身に纏う全てが。
彼女の服も、靴も、髪も、肌も、彼女の全てが驚く程に白く、この明かりのない部屋でぼんやりと淡く光っているように見えた。
「ねぇ、貴方がやったの？」
「………そうだけど」
彼女の答えを急かすような口調にやっと口が動いた。
ふぅん……。と頷きながら彼女は部屋を見渡すと、俺の足元に転がる男が目に止まったようだった。
「折角届けに来たのに、無駄になっちゃった」
ここまで来るの結構大変だったのに、とそう誰に言うわけでもなく零すと、こちらに歩み寄ってくる。
少女が歩くと少女が手に持つ何かがゴロゴロと音を立てる。
距離が縮まる。手を伸ばせばその身体に触れられる程の距離までに。
其処で少女は歩みを止めた。
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久坂朧@三色団子と朧は神(プロフ) - ずっと前から記憶に残る素敵な作品です……二周目読んで大号泣しながら携帯握りしめてました……。作者様ありがとうございます、この様な作品が再び読めて本当に嬉しいです。 (2020年3月20日 22時) (
レス) id: 059aca8b09 (このIDを非表示/違反報告)
ゼロ(プロフ) - 日本語も発想も舞台も物語も綺麗で美しくて、大好きな作品です。こんな素晴らしいお話を残してくださってありがとうございます。読むことができて幸せです。 (2020年1月26日 0時) (レス) id: 9668003c28 (このIDを非表示/違反報告)
満月。碧蒼(プロフ) - 柴山犬さん» 此方こそ本当に有り難う御座いました！ (2019年4月29日 8時) (レス) id: d8fdca1aee (このIDを非表示/違反報告)
柴山犬(プロフ) - もうかなり前に完結した作品なのに、コメント本当にありがとうございます…！満月。碧蒼さんにうっとりしていただけて、私としても嬉しい限りです。また思い出したときにでも読んでやって下されば、本当に本当に幸いです…！ (2019年4月27日 22時) (レス) id: f9baa8e5f4 (このIDを非表示/違反報告)
満月。碧蒼(プロフ) - 本当にもう...息が出来ないくらいに最高でした！うっとりしてしまいました... (2019年4月22日 20時) (レス) id: d8fdca1aee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：柴山犬 | 作成日時：2016年9月4日 23時
