元カノは寿司をまわらせない。 ページ36
-----
「...あ」
「...あ」
男の拳(右ストレート)が相手の顔面めがけて投げられた。
しかし、その相手の女も武に長けているのかすかさず
「君、弱くなった?」
女はケラケラと笑いながら男の投げられた拳をツンツンと触る。
男の顔はみるみる赤くなり血管が浮き出でいるが、彼は考えた。
こんな奴に関わってる時間が勿体ない、早く予定の寿司を食べてさっさと帰ろう、と。
「手前が弱いから手加減してやったんだよ」
男は自身の拳を下ろした。
「ほら、寿司食いに行くんだろ?」
オススメを知ってる、と歩き出す男。
「君たぶんモテるよね」
女はそう云い男の後ろを追いかけた。
「まあ身長がだいぶ足りないけど」
その瞬間、男の右ストレートは女の額に鋭くあたった。
* * *
「わーい、回らない寿司だ!」
子どものようにはしゃぎまわるA。
「少しはじっとしてらんねェのかよ」
中原は彼女の姿を見て恥ずかしくなる。
先の戦いでAが参戦してない事は彼の耳にも届いていた。
どうせ、海外に高飛びしてるか、独房に入ってるかの二択に絞っていたがどうやら前者だった。
ただ、生きてるならそれでいい。
その消息不明だったAが約一ヶ月振りに姿を現して、誘ってきたのだ。
そりゃ行くしかない。
嫌いそうにみえても彼は彼女の事が大好きである。
「サーモンあるかな?中トロもいいな、でもやっぱ始めはうどんでしょ」
「なんッで寿司じゃねえんだよ。しかもねえよそんなん回らない店には」
「ありますよ」
「いや、あんのかよ!」
Aのうどん食べますよ宣言に絶対ないと思った中原だったが、大将からのうどんありますよ宣言には勝てなかった。
「へい、お待ち」
「わ〜、ありがとうございます!」
なんで寿司屋に来て一番始めがうどんなのだ。
それになんで回らないのにうどんがあるのだ。
否、あってもいいが寿司を握ってくれ寿司を。
中原の頭は混乱していた。
オススメの店と言ってAを連れてきたが、本当は携帯の地図アプリで☆4.0を獲得している店を片っ端から口コミと照らし合わせただけだった。
なので、中原は此処に来た事がないのである。
その事は特に重大事件ではない。
「お兄ちゃんは何にするかい?」
カウンターの向こう側で握っている大将が中原に訊く。
「ああ、ポテトフライで」
中原、君もたいして変わらないじゃないか。
-----
390人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
シュピーゲルアイ - 大好きです。更新待ってます。 (4月9日 21時) (レス) @page37 id: af33028691 (このIDを非表示/違反報告)
ちくわ - 好きすぎます (2月20日 3時) (レス) @page37 id: fc78fe5922 (このIDを非表示/違反報告)
米粉めこ - 最高です!面白すぎて腹筋こわれましたwww (12月10日 18時) (レス) @page36 id: 29094487c6 (このIDを非表示/違反報告)
ああ - こういうお話好きです!続き待ってます!!! (2022年9月18日 16時) (レス) id: f16cf667ce (このIDを非表示/違反報告)
遠藤氏(プロフ) - 三斗(トリップ願望者)さん» 自分も笑ってこようって思いまして、入社試験の回を読もうと思ったらどれが入社試験の回なのかわからず、どうしてこんなサブタイにしたのか後悔してますwww (2022年7月30日 18時) (レス) id: d7905a84e3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:遠藤氏 | 作成日時:2020年5月13日 20時