2話 ページ2
「おい、54679番。すぐに訓練場所に来い。」
食事、睡眠、訓練以外にやることがないので部屋にうずくまっていると、私を呼ぶ放送がなった。
訓練場所に呼び出されているのでどうせ訓練だろう。
訓練は軍事兵器というのはだてじゃなく、本格的で、主に護身術が多い。
空手、柔道、合気道、少林寺。
銃やナイフを扱う練習をしたりもする。
ぼーっとしていると、すぐ命を奪われる。
私達を育てている、いや、監視しているのは人間だ。
私達のことなんて、ただの駒だと思っている。
もはやアンドロイドのように人間の心がなくなってしまったのかもしれない。
使えなくなったアンドロイドからすぐ捨てていくから。
心なんてないから、悲しんだりなんてしない。
だけど、完全に普通の人間ではないことは私にだって分かる。
こいつらは黒い方の人間だってこと。
ヘマをしたら私だって捨てられるということ。
遅れると殴られるのですぐに走って訓練場所に行く。
扉を開けるといつもの師匠が待っていた。
「お、いつも早いな。54679番。調子はどうだ？」
明るく振る舞っているけれど、私には見えている。
たくさんの転がったアンドロイド達が。
たくさん殴られた跡のついている被害者達が。
悲しいなんて感情はわかない。
話したことなんてないのだから。
ただただ無に包まれた。
「はい。今日も、とても元気です。」
マニュアル通りの答えを返す。
相手の機嫌を損ねないように、ただし最低限の言葉で。
「そうか、それは良かった。…では本題に移ろうか。」
思ってもいないことを笑顔で言う。いつものことだ。
「見ての通りだが、たくさんの使えないアンドロイド達ができてしまった。」
そう言って自分で動かなくさせたアンドロイド達を指差す。
いつか私もあんな風になるのだろうか。
「しかし、1ヶ月後にアンドロイドの出荷があるんだ。お偉いさんのな。」
話は大体察すことができた。
どうせ、私を出荷するのだろう。
「そこで、お前を出荷したい。いいな？」
ここで、「いいえ」と答えれば私はあの転がったアンドロイド達の仲間になるのだろう。
生憎私はそんなに優しくない。
答えは
「はい。」
だ。
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作者名：十六夜家。 | 作成日時：2024年3月17日 20時
