騙し屋

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どうもこんにちは、漆原です。

こちらのホムペには小説を載せています。

小説の方では文字数の関係で色々不具合があるので、ホムペでやらせていただきました。

非常に読みにくいので、文字を「大」にして読んでください。

短編集と称してプレイリストを作っていますので、良ければそちらもご覧下さい。

短編集↓↓
製作中

　すき、なんて、お前が必死になって言うから、
　私は俯いてしまう。
　その「好き」は心からのものじゃないじゃないよ。お前には彼女がいるじゃん。私は彼女のいるお前に強いただけ。本音を言いなさい。
「違っ……」
　私はお前をベッドの上に組み敷いて、何もせずに見つめた。お前は反射的に抵抗してから、我に返って私を見つめた。悲しそうに、私を見つめた。
「俺っ……は、」
　二人の人間が好きだったとでも言うの？
　そう聞いたら、バツが悪そうにしながら、でもお前は確かに頷いた。

　部屋は涼しかった。心地の良い温度。地球温暖化が叫ばれているものの、日常の些細な変化など、私たちに少しの影響も与えはしない。長袖のパーカーの袖をたくし上げ、お前の唇に触れるか触れないかくらいまで顔を近づけた。
「例えばこうして」
「っ」
「お前と彼女の繋がりを根っこからブチッてしちゃっても、いいって言うの？」
「……あ、あんたはそんなこと……」
「するよ？　私は」
　お前の中の私のイメージは甘い。私は、仮面を被ったヤンデレだから、いざその仮面を剥いだら、いつもの優しい天然ちゃんは消えて、牙を研ぐ猛獣へとその姿を変化させる。それこそ、地球温暖化なんて比べ物にならないくらいのスピードで。
「ああ、私だってお前のことが好きだよ。でもその優柔不断でネチネチしてるとこだけはどうもダメだ。嫌いだ。」
「えっ」
「ていうか、さっき好きって言ったよね。何、浮気？　弄ばれたいの？」
「そ、そうじゃなくて、ただ気持ちを伝え」
　お前のセリフの続きは、一瞬だけくぐもった声になって、消えた。
「あーあ、私の城に何の装備もなしに入ってくるいい子だから、お土産渡しちゃったじゃないか」
「っ……」
「ホントにはしないなんて思ってた？　何もされないで、キスすらされないで帰れるなんてこと思ってた？　甘い、甘いよ」
　本当に、口の中で溶けて消えてしまう砂糖菓子みたいに甘い。手ぬるい。私はただの同級生じゃないんだよ？　前に忠告したじゃん。知ってるよね？　じゃあ、やっぱり弄ばれに来たの？　遊ばれて、捨てられに来たの？　日本人は平和ボケしすぎだね。
「それに、私女じゃないんだよね」
「…………は？」
　もう一度キスをして、ベッドから降りる。帰っていいよ、という風に左手を差し出してドアの方へ向けたけれど、お前は起き上がっただけで、出ていこうとはしなかった。
「女じゃないって」
「対義語を探せばいいだけだよ」
「お、男」
「そう。男。お前と同じ。お前が恋してたのは偽りの私。目は覚めた？　わかったら彼女のもとへ行きなさい」
　お前は顔をくしゃりと歪め、脱兎のごとく私の部屋から逃げ出した。私は勿論、追いかけずに、出て行った方向をただじっと見た。
　しんとした部屋の中、あいつが持ってきた飲みかけのジュースと食べかけのお菓子が、沈黙を守って居座っている。
「……………」
　あいつが食べかけたポッキーの袋をつかみ、中身の二本と欠片を口の中に放り込む。
　ああ、今回もいい仕事をした。報酬はいくらだろうか。
「……あ、もしもし」
『終わったか？』
「完了」
『じゃあ、次まで待機してくれ、クイーン』
「ああ」
　お前はとてもいい子だった。精々、彼女と上手くおやり。
「……すき、か」
　私も好きだよ。嬉しかった。嘘はつかない。
　捨てかけていた女を蘇られてくれたのだから。

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