普通だなんていいたくないけど。

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「いいなぁ…」
ーーーーっ!
自分の口から出た言葉に、おどろいた。
えっ…

こちらの企画から↓
http://uranai.nosv.org/u.php/event/contest1/

なんか、足りない。
最近、そう思う。
何故か。
分からないけど。

パラパラパラ…。
放課後の教室に、紙をめくる音がひびく。
「へぇ、交換ノートか」
私は、つぶやく。
どうやら、自由帳に一人二ページという決まりで、回しているらしい。
これは私の交換ノートでは、ない。
学校の誰かさんのだ。
バレないよう、ここ(倉庫)に隠しているのかな？
まぁ、現に私にバレたけど。
友達の明日香の代わりに、荷物運びに来たがてら、少し散策していたら、このノートを見つけた。
あー、見ちゃいけなかったかな？
でも、好奇心におそわれて見ちゃったのだし。
こうなったらーーーー！
私は、一回閉じて、そして一ページ目をめくった。

一ページ・ニページ
本当四の一の無茶振りには、困る。
「突然交換ノートをしよう！」って…。
あ、これ四の一とか言っちゃっていいのかな？
僕ら以外が見たら、どうしよう。
突然だけど、みんなどうするか書いて。
どうせ倉庫に隠すのだし、見る生徒いないと思う。だから、偽名じゃなくて本名でいいよ
ってのが僕の意見。
それと、市販の交換ノートを見たら「コイバナ」とか「最近あった事報告！」とかあったけど、僕らは、どんな事書く？（あ、一応書いとくよ）今度、決めよう。
「コイバナ」興味ない。
「最近あった事報告！」一の一が、最近僕になついている事。
「はまっている事」カードゲーム僕のクラスで流行っている
こんなところかな？

「見る生徒いない」って…、私見ているのですが…。
というか、四の一とかって何！？
偽名とか本名とか…。
訳がわからない、交換ノートだ。
そういえば、私のクラスで、カードゲーム流行っているよね？
この子、同じクラスかも。
文字が大きくて、これだけでの内容でニページまでいっている。
三、四ページ目は、誰が書くのだろう？

「ねぇ、交換ノートにどんなもの書くか決めよ」
そういったのは、六の三だった。
あ、そういえば忘れていたね…。
僕が言ったものの、それっきりだった。
ここは、学校のとある教室。
僕らは、教室の精霊みたいなモノ。
自分自身もよくわからないけど。
この教室は、みんなで遊んだりする場所。
「これを、提案した四のニ！どうなの？」
僕っ？
六の三の言葉に、僕は反応する。
「た、例えば。『今日のヤル気度』とか？」
今考えたものを言う。
バン！
イキナリ、交換ノートの提案者四の一が、机をたたく。
「帰る」
いきなりの出来事だった。
………。
少しの沈黙。
「はぁ！？」
六の三が、空を切り裂くような声を上げた。
「私、詩織ちゃんと明日『女子力アップ講座』開くって約束したから」
四の一は、振り返りそう言った。
じょ、女子力アップ講座？
女子力を上げる講座？
な、なんかすごい。
すると、教室のドアをガタンと開けて、出て行った。
帰ると言っても、四年一組の教室なんだけどね。
「交換ノート、もう少し面白くなると思ったんじゃない？」
六の一がボソッと言う。
確かに。
四の一ならあり得る。
なんか…、ごめんなさい。
「さて、提案者がいないから私も、帰ろ」
リーダーの六の三が、席を立つ。
ええっ！
「え、じゃ、じゃあ僕もっ！」
おどおどしく一の一が、手を挙げる。
すると。
「ちょうど良かった。やってみたい御呪いがあったので」
四の三が、一の一を連れて教室を出る。
「俺も！」
「ええっ！なによっ、置いていかないでよ！」
「わぁ～楽しそう！私も！」
「仕方ないね」
三の一に続き、ぞろぞろと出て行く。
えっ、ちょっ、僕…。
この教室に残ったのは。
無気力な一の三、お人好しな三のニ、僕、読書好きな五の一のみ。
「さて、行くとするか」
残りメンバー、五の一が出て行く。
本を読みながら。
一の三は、にこにこ笑っていて。
三のニは、気まずそうにしていて。
僕は、パニック！
ど、どうしよう。
こういう「イキナリ」に弱い僕。
このまま、何時間も経っちゃいそうだよっ！

私、四の一は、クラスのおしゃれ番長みたいな位置だった。
教室を出て、四年一組に戻ったものの。
校庭を見て外に遊びに行きたくなった。
それで今、白線の内側を歩いているってわけ。
今日は、よく晴れていて落ちていく太陽が、まぶしい。
「ユイ～っ」
ん？
私の学校で使っている名前を言われた。
って事は、あの子たちじゃないや。
声の主を探して、振り返ると詩織だった。
「どうしたの？」
私が聞くと、詩織が。
「も～、いたから話しかけただけだよ」
詩織の髪が風になびく。
「あと、ユイを学校以外であまり見かけないから。何かあったのかな？ってだけ」
そっか。
確かに、私、いつもあの教室にいるもん。
そりゃぁ、そう言われてもおかしくは無い。
「あ、ねぇ。詩織、今暇？」
詩織が、少しおどろきながら「え、まぁ…うん」と答えた。
私にそう聞かれるのは、当分ないと思ったからだろう。
「じゃあ、女子力アップ講座の内容を確認しよう！」
うん、そうだね。私、ナイスアイディア！
なんか、詩織に会って気分変わったわ。
さっきまでの自分が、バカバカしい。
私は、そんなキャラじゃないっーの！
物思いにひたっていると、また名案がピコリ！
「あ、あと図書館で漫画も借りよう！キャンデーの最新刊出たもんね！」
キャンデーは、少女マンガ雑誌の一つ。
ちなみに、私は、付録よりも内容にこだわる派！
私は、詩織の方を見る。
詩織は、笑って。
コクンと頷いた。

「初めまして！私は、冒険隊の隊長のにの…じゃなくてレミ！よろしく」
私は、テンコウセイ向けて言う。
おっと、危ない。ニの三って言おうとしちゃった。
探検隊は、私と勇太で結成したものだよ。
そしたら探検隊副隊長の勇太君が
「ねぇ、テンコウセイって何？」
とテンコウセイの緑ちゃんに言った。
あ、それ私も思った！
「転校生って言うのは、他の学校から来た子のことだよ」
そう言って、緑ちゃんは、にっこり笑う。
優しそうな子だなぁ。
「ねぇ、緑ちゃん。探検隊には入らない！？」
副隊長が言う。
突然のスカウトってヤツだ。
でも、スカウトは、そんなあまっちょろいモノでは無い。
「副隊長、違うよ！もう少し緑ちゃんの素質を見ないと！」
しっかり反論。
「そっか」
なんか、すごいあっさり納得してくれたのですが。
「じゃあ、探検隊に入った時は、よろしくね」
緑ちゃんは、またにっこり笑った。
「そうそう！この学校の七不思議って知ってる？」

「えーと、この紙に好きな人の名前を…書く」
…。
どうしよう。
好きな人がいない！
ここは、四年三組の教室。
交換ノート騒動の後だ。
この御呪い、どうしてもやってみたかったのですが。
すると。
「もーしもーし！四の三、聞こえている？」
私を呼ぶ声が聞こえ、ハッと我にかえる。
この人は…。
「理科室さん！」
ガタッと席を立ち理科室さんに、近寄る。
「もー、何回も呼んだのに」
見た目は、二十才くらいの人だ。
前に、七不思議の「動くガイコツ」はガイコツの仕業ではなく、理科室の仕業だと見抜いた。
その時から、仲良しだ。
ごめんなさい、御呪いに夢中で。
私の机の上の紙を見て、
「やっぱり、四の三は御呪いが好きなんだね」
ハイッ！オカルトとか大好きです！
こうやって、話し相手になってくれる理科室さん。
実は、アコガレの人でもある。
すると、頭にある言葉が浮かぶ。
『アコガレって言うのは好きという事と似ている言葉なんだよ！』
恋愛経験ゼロの一のニが言っていた言葉。
意味がわからなかったけど、こういう時になると、信じちゃう。
あ。
「理科室さん、この紙に、名前。書いてくれますか？」
大丈夫。理科室さんは、鈍いからーーーー。

これで、半分かな？
どうやら、この交換ノートを回しているのは、教室の精霊っぽいモノらしい。
「いいなぁ…」
ーーーーっ！
自分の口から出た言葉におどろいた。
えっ…
なんで私今「いいなぁ…」って！
少し考えてみる。
……あ。
分かった。
私、このつまらない世界に飽き飽きしていたんだ。
普通ーーーーなんて表現キライだけどーーーーってのがイヤだったんだ。
そっか。
何か、足りないって思っていたけど。
刺激が足りなかったんだ……。
……。
少し、交換ノートを見つめる。
まぁ、いいや。
考えるのって面倒くさい。
そう思い、ページをめくった。

「もぅ、何やってんの」
ここは、いつもの教室。
面倒見の良い六の三が、ニの三のキズの手当てをしている。
「七不思議スポットを体験していたら、転んだ」
そう言いつつ、ニの三は、ムゥとほっぺをふくらませる。
「あれでしょう、探検隊作ってんの」
四の一が言う。
交換ノートは、順調に進んでいる。
へぇ、そうなんだ。知らなかった。
僕は今、一の一と僕のクラスで流行っているカードゲームをしている。
一の一が、物分りはやくて助かった。
僕、説明するの苦手だし。
「四のにぃ～」
一の一に呼ばれる。
「あ、ごめん」
六の三とニの三のやり取りに夢中になってた。
多分『四のにぃ』は、兄と二をかけたものだろう。
「そういえば、この時期といえば、あれかぁ」
六の二が、つぶやく。
あ、そっか。
僕も、ぼんやり思う。
「ああ、そっかぁ～」
一の一も、真似していった。

まだ、みんなの分回っていないけど、これは書くべきだと決まったので書きます。
「リセット」

り、リセット？
交換ノートを見て、意味不明な言葉が出てきた。
リセットっていうのは、元に戻すっていう意味だけど。
私が知っているのは。
ここで、出てくるとは思わなかった。
本当に、訳がわからない交換ノートだ。
まぁ、ともかく続きを読むとしよう。

リセットっていうのは。
クラスメイトの記憶を塗りかえる事。
僕は、何があっても四の二のままだし、他のみんなもそう。
だから、進級はしないんだ。
だけど、僕は進級しないのに、みんなが進級したクラスに僕がいるって思っちゃダメでしょ。
僕は、四の二にそのままいるのだし。
みんなは、クラスが変わるけど。僕は、そのまま。
そもそも、僕はクラス自身だからね。
だから、記憶を塗りかえるんだ。
僕がいるクラスじゃなくて、別の誰かが一緒のクラスという記憶を。
そして、塗りかえる時は、終業式ーーーー。
書記ソラこと四の二

そっかぁ。
なんか、不思議な話だけど。
スッと理解できた。
身に起こっていることだからかな？
私は、ニの三だったけど、レミって女の子は知らない。
それに、この子ソラっていうんだ。
私のクラスメイトだ。
交換ノートの「ソラこと四の二」という部分を見つめる。
はぁ。
ずっと文字を読んでいて疲れた。
私は、倉庫の床に座り込む。
もう夕方だ。
普通が、イヤだって思っている事に気付いたけれど。
なんか、この人生普通じゃないって思えてきた。
前まで普通って思っていたのに。
その普通が、普通じゃない事だとわかって。
うーむむ。
ムズカシイ。
っていうか。
普通なんていいたくないんだよね。
人それぞれ普通の限度が、違うから。
異世界で、モンスターと戦っている生活なら、それがその人の普通。
私なんて、モンスターと戦うなんて全然普通じゃない。
一言で、普通だなんて言って片付けたくない。
はぁ。
私は、倉庫の天井とにらめっこをしていた。

終業式の日。
明日香と喋っていたら。
頭の中に、何かが走ったのは。
きっと。
気のせい。

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