【俺楽。】暗殺者ヴァル

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はい、モモハです！

俺は魔王で嫁が勇者で命狙ってくるってもう意味わかんないけど楽しくやってます。【名前変換オリジナルファンタジー】の短編、暗殺者ヴァレンタイン(ヴァル)の過去編です。ifストーリーです。

本編の彼とは全く関係ないです。こんな過去あったらかっこいいよね、って感じです(必至)！

ホムペで小説を作ってみたかったので、ハイ。

注意！

ほぼシリアス。

悲恋です。

夢主さんが最後の最後だけ出て来ます。

それでは、ヴァルの過去編、スタート。

＿＿小さい頃、俺は蟻を殺した。

暖かい両親は、元気な子だと言って頭を撫でてくれる。嬉しかった。

しばらくして、俺は蝶を潰した。

両親は俺を叱った。何故蝶を潰したのかって。

花の蜜を奪っていたんだ、と答えた。

奪って正解だ、と両親は言う。花は蜜を渡す代わりに、花粉も運ばせるのだと。

＿＿それから俺は、猫を殺した。

両親は俺を殴った。何故こんなことをしたと。

鼠が襲われていたんだ、と答えた。

鼠なんてどうでもいいだろう、と返される。

＿＿俺は、あの人たちの考えがわからないんだ。ただただ知りたいだけなのに、だんだん両親は冷たくなる。

「お前は要らない子だ」

頭を撫でてくれた手は、ある日忽然と消えていた。

それから俺は地下に潜り、汚い仕事を引き受けるようになった。強盗に、密偵に。遂には、殺人にも。

最初に殺したのはとある貴族の輩だった。

家族や親類への人当たりはいいものの、領民への当たりは強く、税は増す一方。領民の一人が、俺に暗殺依頼を手渡した。

俺にはその才能とやらがあったらしい。存在を気付かれることなく、抹殺できた。報酬を貰い、領民は喜ぶ。さながら悪を倒したヒーローだ。その日は結局、領内の酒場で呑んだくれた。

しばらくして、また暗殺依頼が届く。依頼者は、俺が殺した奴の叔母に当たる人物だった。

「領民を駆逐しろ」

これには戸惑った。俺は悪を抹殺し、領民と手を取り合って喜んだのだ。まだあの頃は、純粋で無垢だった。

通り名はヴァル・サタン。厨二くさいけど、かっこいいだろう？領民が授けたのだ。

しかし、貴族から話を聞いて、自体は一変する。

「領民が、借金を滞納……？」

元は平穏な領地だったなか、とある人物がパチンコ屋を建てたらしい。ど田舎なところに急にそんなものができた為、加減を知らない大人たちは続々と自身の金をそれに費やしていった。その結果借りた金さえも返せず、焦った領民は俺に暗殺依頼を出したというわけだ。

皮肉なこった。俺は騙された怒りと戸惑いの中、遂に領民を全滅させた。3桁を超える数を、一夜にして、一人で。

雪のように真っ白だったマフラーは、熟した林檎のように、深く、紅く染まっていた。

渡された金の額はそれに見合う以上のものだった。質素に暮らせば一生生きていけるってくらい。

＿＿金が全てだ。

俺は堕ちていった。

そんなある日。今度は用心棒の仕事を引き受ける。

幾人も人を殺めた俺が、今更人を救えるかっての。……償えやしないのに。

そんな思いが心を支配するなか、一人の少女と出会う。

「初めまして、貴方がヴァレンタインさんですか？」

「……ああ、お嬢さん。俺はヴァレンタイン。ヴァルって呼んでよ」

ランラ・サグシール。お偉いさん貴族のご令嬢。

深海みたいに深い碧のボブが風にさらさら揺れる、ほのかな黄色のドレスを纏った普通の女子。新緑みたいな色の瞳はぱっちりと輝いている。

特段綺麗なわけじゃないし、可愛いってほどでもない。胸だって中途半端だ。

「俺が守るさ」

幾人もの女を、あるときは殺し、あるときは抱いた俺には、其奴は星屑に見えた。

そして、事件の夜まであと数刻となる。

「ねえ、なんで貴方、用心棒なんてしているの？」

「金の為だ。あとそっから顔出さないで下さい」

嫌だ、と無邪気に笑う彼女。やれやれと俺は背を向け、彼女の顔が出てきた扉を力尽くで閉める。ちょっ！？とあわてた彼女の声は、その向こうから響いてきた。

「……そんなにお金が好きなの？」

「まあ、ね。金は裏切らないですから」

「私も裏切らないよ」

しっかりとした彼女の声に、俺は背を向けたまま顔を傾け、頰を扉につける。

向こうから聞こえてきたのは、狙われてんのかってくらい陽気な彼女の声。

「私だって一回も約束破ったことないよ。好きな人なら尚更。だから、ヴァルも裏切らないよ」

「＿＿それは、俺が好きだってことでいいの？」

俺が視線を落として言うと、ふふ、と彼女は笑った。

「そう受け取っても構わない！」

「……俺、君はタイプじゃないかも」

ええー！？と残念がる大声が聞こえた。ホント、扉を閉めて正解だったと思う。

暗い夜が月で照らされる中、俺は太陽みたいに紅くなっていた。耳まで暑い。

ったく、とマフラーを鼻までぐいっと上げた。

「タイプじゃない」

俺が人を愛しちゃダメなんだ。

ダメなんだ。

その時だった。パリンッと鋭く窓の割れる音がする。そのあと、彼女の悲鳴が屋内に反響した。

急いで扉を開ける。そこに居たのは。

刃物を持ったいかつい男と、怯えきった様子で捕らえられたランラの姿。

＿＿しくじった。俺は仕事で初めてそんな思考に陥る。

男はランラを捕らえ、窓から飛び出していった。

「何、誘拐された！？」

「はい、すんませんね。というわけで取り返してきますあだっ」

依頼主の太っちょな男に背を向けると、頭をチョップされた。割と痛い。

「しっかりして下さい！金ならいくらでもくれてやる！だから娘を、助けてくれ！」

「ほう、いくらでも、ね」

言ったなこのおじさん。俺はにたりと笑った。

「今度はしくじらないよ」

「ここが、本拠地ね……」

真っ暗な洞窟に、無数の松明。ドラ○エだったら絶対メタルスラ○ム出てくるよね。

まあ、俺にとってのメ○ルスライムがランラなわけだけど。ちょっとあれだね、お姫様救いに行く騎士みたいd……。

騎士って程俺は綺麗じゃないだろ、とサイレントで自分の頰を叩く。なんなんだろ、全く。

そのまま俺は洞窟を壁伝いに進んでいくわけだけど。

がこっ、と床が開いた。まずいや。

俺は暗闇に吸い込まれた。

「＿＿っ、痛い」

「大丈夫ですか⁉」

目を覚ますと、視界には俺の探したランラ(メタルスラ○ム)の姿が。罠にかかった挙句幻覚とか。俺も末期だなあ。

「……やっぱり、タイプだったかも」

「えっ」

そう呟き、飄々とした顔を崩さないまま軽々と上半身を起こす俺。ランラは丸っこい瞳を更に見開き、あうあう、と口を開閉させた。だんだんと頰が染まっていく。

こういう子は初めてだ。こんな怖いところに一人放り込まれて、味方が来ても泣かない元気な子は。

「初めてだ」

「っ、それは……」

俺はランラに微笑みかける。今までとちょっと違う、彼女だけに見せる笑み。

自分でもびっくりするほど甘く優しい声が出た。

「俺も好き」

牢屋の中で、俺たちは口付けを交わした。

「ねぇ、ヴァル」

「何？」

何じゃない、とランラが頰を膨らませる。

世間でいう可愛い子とは違うけど、俺にとっては一番素敵な女の子だ。俺が君を好きなら、それでいいでしょ？

「いつまでこんな所に居ればいいの？私もう飽きた！」

「俺だって知らないよ。飯が出るだけありがたいよね」

多分犯行の目的は身代金だ。まあ、俺も普段金の為に良くないことしてるから、怒ったりできないけどね。

ご飯まだかな、と俺が立ち上がり、扉に近づこうとすると。

きゅ、と服の裾を彼女に掴まれた。振り向くと、眉を下げたランラがこちらを見やる。

「ヴァル、聞いて」

「何？」

「お父様たちは私を助けない」

は、と彼女を凝視すると、目をそらされた。そのまま言葉を紡ぎ続ける。

「お父様は外聞を気にするだけ。私なんてホントはどうでもいいの。だから、私のことはいいから。貴方なら一人で脱出できるでしょ？だから……」

「はい、そこふざけない」

「ふにゅ！？」

むゆっと彼女の頰を両手で包み込む。俺はゆっくりと言う。

「俺は一度狙った標的(えもの)は逃さない質(たち)なんだよ。君も連れていくに決まっt」

「ヴァル！！」

彼女の大声に、大きく肩を揺らす。彼女は息を整えると、キッと俺を睨んだ。瞳の光が、ぎらぎらと光る。

「私は貴方に生きて欲しい。これからどんなことがあっても！だから、行って！」

「で、でも」

「いいから！」

その時、遠くの通路から足音が聞こえた。多分犯人の一味だ。五人くらいだろうか。

「何事だ！喧しい」

「別にどうもしない」

俺は憮然として、彼女を抱きしめながら答える。ランラは顔を俺の胸に埋めながらも、耳はばっちり真っ赤だ。やっぱり可愛い。

兵士は俺たちを一瞥すると、少し顔をしかめつつもハッ、と嘲笑した。

「そこの女、残念だったな。お前の父は金を渡したくないらしい、見捨てられたんだよ」

「……やっぱり」

彼女の声のトーンが、下がった。

やっぱり、なんなんだよ。

この時俺は、初めて他人の為に牙を剥いた。報酬の為じゃない、自分の意思で。

いきなり立ち上がった俺に戸惑う周りの輩を、隠し持っていたナイフで一蹴。急所を狙い、綺麗な紅の線が舞う中でばたばたと倒れる。

ランラはじっと俺を見ていた。俺は彼女に微笑みかけると、親玉に向き直る。

「お前を倒せば、いいんだっけ」

親玉の周りにはまだ複数の部下が。一斉に構えるなか、親玉はグハハハ、と下品に笑った。

「若造。お前も俺と同類だろう。人に牙を剥けねば己の生きる道を失う」

「残念。違いまーす」

俺にはランラがいるから。

複数人の賊に、俺は立ち向かった。

「……よーし、あとはお前だけね」

「やるな」

親玉と対峙したヴァレンタイン。互いに暗器、ナイフを構えなおし、睨み合う。

……やがて、親玉が笑い出した。

「なんだ、びびってんのおっさん？」

「いーや。お前、やっぱり若造だなあ」

どういう意味だ、と眉をひそめるヴァレンタイン。親玉は笑って告げる。

「こういう意味だよ」

ひゅ、と暗器を投げた。ヴァレンタインは軽々と避ける。なんだよ、と口笛を吹いてみせた。

「そんだけか。じゃ、殺しまーす」

「ああ」

一瞬だった。ヴァレンタインは真顔で親玉の胸をひとつき。何故か相手は、やすらかな顔をして眠る。

ヴァレンタインは倒れた其奴を見ると、ナイフを落とした。カラン、という空虚な響きが洞窟にこだまする。

「＿＿やった、やった！ラン、ラ……？」

「やった、ね……ヴァル」

笑顔で振り向いた先に居たのは。

地面に血を滴らせ、横になった恋人の姿。

慌てて駆け寄るヴァレンタインの頰に、そっと手を伸ばす。

「ランラ、さっきの、俺がっ避けたやつっ⁉」

「……避けられなかった私が悪いから。ふふ」

笑ってる場合じゃないだろ⁉としどろもどろになるヴァレンタインに、ねえ、と優しく語りかけるランラ。

「……覚えて、居てくれる？」

「……勿論。でも、嫌だよ俺……！」

ちゅ、と軽いリップ音。ランラがヴァレンタインに唇を重ねたのだ。そのままランラは目を閉じて微笑みかける。

「なら、いいよ。……いきなさい、ヴァル」

「ランラ、嫌だ！俺、やっと見つけたのに」

「いきなさい」

頰に伸ばされた彼女の手が、ぽす、と落ちた。

ヴァレンタインの叫ぶ声が、誰もいない洞窟に、響いた。

「おーい、ヴァルくん何やってんの。書類整理(デスクワーク)終わったって！」

「あ、そうですか？じゃ、確認しますねー」

ランラ、俺は今、元気にやってるよ。

いつか会おうね。

あとがき

シリアス&悲恋とか辛すぎ。

最後のランラのセリフ、「いきなさい」は二つの意味があります。
行きなさいと、生きなさいです。決して変換が面倒だったとかじゃないです！はい！

まあ、これの本編はギャグなので。本編知らないって方は是非！
俺は魔王で嫁が勇者で命狙ってくるってもう意味わかんないけど楽しくやってます。【名前変換オリジナルファンタジー】

こんな長ったらしい重い物語をお読みくださりありがとうございました！

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