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「古賀、これ運ぶの手伝ってよ」
「それ重いやつじゃん、男子が頑張りなよ」
「古賀力持ちじゃん」
「恵は女の子なんだよ」
「いいよ、別に」
でも、と言ってくれる友達に、ありがとうと伝える。
その子は「私も手伝う」と言ってくれて、荷物を運び終えた帰り道。
「恵って、女の子ってことを理由にしないよね。本当、そういうところかっこいいなぁ」
「そんな凄いことじゃないよ」
「ううん、本当にかっこいい」
「……そうかな」
それじゃあ、まだ一回も会ったことのないあの子は。
きっと私より、もっともっとかっこいいんだろうな。
◇◆◇◆◇◆
「古賀は野球やんねぇの?」
突然やって来た嵐のようなその男は、そう聞いてきた。
「お前の兄ちゃん、野球超うまいしさ、おとさんだってプロなんだろ。お前はなんでやんねぇの?」
「なんでって」
「なんでだよ、もったいねー。たくさん教えてもらえんじゃん」
「だって、野球って男の子のスポーツだもん。女の子はやらないから」
そう言うと、茂野吾郎は一瞬驚いた顔をしたあと、分かりやすく仏頂面になった。
「野球やんのに男も女も関係ねーし、なんだよそれ。てかじゃあ俺らとやってたあいつは何なんだよ」
「あいつ?」
「そ!向こうにいた時のチームにさ、清水薫って奴がいたんだけどさ、こいつが本当にヘタクソなんだよ」
「清水薫って、女の子?」
目を丸くして聞くと、「おう」と当然のように頷かれる。
「そいつ、ずっと練習してんのにフライ捕れるまで超時間かかったんだぜ?運動音痴だったしさぁ、キャッチボールだってろくに出来ねーし」
「それなのに野球やってたの?」
出来ないのに、女の子なのに。
お兄ちゃんとお父さんを見てるから知ってる。
ノックとか、簡単に捕ってるけどボールは凄く速いんだ。
バッティングだって、毎日素振りするから手に豆が出来て固いんだ。
土曜日も日曜日も練習で、友達とは遊べない。
なのに。
それを、女の子がやってるの?私と同じ年の女の子が?
「壊滅的なやばさだったけどさ、あいつ絶対に諦めなかったんだよ。フライも捕れるようになったしさ、まあ俺が助けてやったんだけど。
でもあいつさ、たった一日で、俺の100km/hの球捕れるようになったんだぜ?」
へへへっと笑う彼は、まるで自分のことみたいに自慢している。
「何度もボロボロになりながらさぁ、でも絶対泣かねーの。一回も女だってこと理由にしないんだよ」
そこは認めてやらないでもない、と偉そうにここにはいない清水薫って子に言う。
彼が引っ越してきてから、そんなに時間は経ってないけど。
その子の話をする彼は、何か大事なものでも見ているかのように優しくて。
私にもこんな顔にさせることが出来るのかな、なんて思う。
だからさ、と私の顔を見て言う。
「野球に男も女も関係ねぇぞ?」
◇◆◇◆◇◆
きっと、それが言いたかっただけなんだろうけど。
何となく、思ったのだ。
きっとほ清水薫って子は、茂野吾郎にとって大事な子なんだと。
女の子だろうが何だろうが気にしない。 気にさせない。
そんな清水薫って子が、茂野吾郎の中にずっといるのだろう。それが羨ましくて。
「私もまだ君の心の中に入れてるのかな」
きっともう、チームのみんなにも、清水薫って子にも会って思い出話に花を咲かせているのだろう。
私は清水薫じゃない。
だけど、少しでもいいから茂野吾郎の中にいたくて。
いつの間にか、会ったことも話したことも、顔すら見たことの無い子に、ライバル意識を勝手に燃やしていたらしい。
「それ重いやつじゃん、男子が頑張りなよ」
「古賀力持ちじゃん」
「恵は女の子なんだよ」
「いいよ、別に」
でも、と言ってくれる友達に、ありがとうと伝える。
その子は「私も手伝う」と言ってくれて、荷物を運び終えた帰り道。
「恵って、女の子ってことを理由にしないよね。本当、そういうところかっこいいなぁ」
「そんな凄いことじゃないよ」
「ううん、本当にかっこいい」
「……そうかな」
それじゃあ、まだ一回も会ったことのないあの子は。
きっと私より、もっともっとかっこいいんだろうな。
◇◆◇◆◇◆
「古賀は野球やんねぇの?」
突然やって来た嵐のようなその男は、そう聞いてきた。
「お前の兄ちゃん、野球超うまいしさ、おとさんだってプロなんだろ。お前はなんでやんねぇの?」
「なんでって」
「なんでだよ、もったいねー。たくさん教えてもらえんじゃん」
「だって、野球って男の子のスポーツだもん。女の子はやらないから」
そう言うと、茂野吾郎は一瞬驚いた顔をしたあと、分かりやすく仏頂面になった。
「野球やんのに男も女も関係ねーし、なんだよそれ。てかじゃあ俺らとやってたあいつは何なんだよ」
「あいつ?」
「そ!向こうにいた時のチームにさ、清水薫って奴がいたんだけどさ、こいつが本当にヘタクソなんだよ」
「清水薫って、女の子?」
目を丸くして聞くと、「おう」と当然のように頷かれる。
「そいつ、ずっと練習してんのにフライ捕れるまで超時間かかったんだぜ?運動音痴だったしさぁ、キャッチボールだってろくに出来ねーし」
「それなのに野球やってたの?」
出来ないのに、女の子なのに。
お兄ちゃんとお父さんを見てるから知ってる。
ノックとか、簡単に捕ってるけどボールは凄く速いんだ。
バッティングだって、毎日素振りするから手に豆が出来て固いんだ。
土曜日も日曜日も練習で、友達とは遊べない。
なのに。
それを、女の子がやってるの?私と同じ年の女の子が?
「壊滅的なやばさだったけどさ、あいつ絶対に諦めなかったんだよ。フライも捕れるようになったしさ、まあ俺が助けてやったんだけど。
でもあいつさ、たった一日で、俺の100km/hの球捕れるようになったんだぜ?」
へへへっと笑う彼は、まるで自分のことみたいに自慢している。
「何度もボロボロになりながらさぁ、でも絶対泣かねーの。一回も女だってこと理由にしないんだよ」
そこは認めてやらないでもない、と偉そうにここにはいない清水薫って子に言う。
彼が引っ越してきてから、そんなに時間は経ってないけど。
その子の話をする彼は、何か大事なものでも見ているかのように優しくて。
私にもこんな顔にさせることが出来るのかな、なんて思う。
だからさ、と私の顔を見て言う。
「野球に男も女も関係ねぇぞ?」
◇◆◇◆◇◆
きっと、それが言いたかっただけなんだろうけど。
何となく、思ったのだ。
きっとほ清水薫って子は、茂野吾郎にとって大事な子なんだと。
女の子だろうが何だろうが気にしない。 気にさせない。
そんな清水薫って子が、茂野吾郎の中にずっといるのだろう。それが羨ましくて。
「私もまだ君の心の中に入れてるのかな」
きっともう、チームのみんなにも、清水薫って子にも会って思い出話に花を咲かせているのだろう。
私は清水薫じゃない。
だけど、少しでもいいから茂野吾郎の中にいたくて。
いつの間にか、会ったことも話したことも、顔すら見たことの無い子に、ライバル意識を勝手に燃やしていたらしい。
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作者名:にらたまご | 作成日時:2017年12月3日 23時