夏目友人帳【田夏】

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どうも、まんまと田夏沼に両足を突っ込んだ茸スープです。

日夜場もモラルも無視して沸き出る妄想、否、田夏の素晴らしい日常。これを具現化しなくては自分未練たらたらで死ぬな、と思い、雑な文章で二人を綴ってゆきます。

にわかのくそ野郎ですが、生暖かい目で読んでいただければと思います。

それでは、どうぞ。

田夏【手と手】

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「夏目。大丈夫か？」

蒸し暑い外気の中汗を滝のように流している夏目に、田沼は言った。その声は何処か穏やかではなく、少し焦っているように感じる。

「ああ、大丈夫だよ、そんなに慌てなくても。今大丈夫？」

「大丈夫。さ、上がってくれ。今麦茶出すからな」

「いつも悪いな、田沼。気を遣わせちゃって」

「そんなことないよ。このくらい当たり前だ」

夏目は白のキャスケットをうちわ代わりに扇いでみるも、そこから来るのは生暖かい夏の風ばかりだ。

縁側際に揺れる青い風鈴を眺めながめて居ると、カランという氷の音が聞こえた。

「暑かったろ。汗が凄いぞ」

「ん、まあな。お陰で水に入っていないのに服がビショビショだよ」

「あれ？夏目、ニャンコ先生は？」

麦茶を飲む夏目の左横を指差しながら田沼は言った。夏目は「ああ……」と前置きをして続けた。

「ニャンコ先生なら、此処へ来る途中の川でヒノエ達と酒を飲んでるんじゃないかな。『暑いから私は日陰でゆっくりしているぞ！』と言ってたから」

「ヒノエ？妖怪か？」

「え、ああまあな。それしても、山は涼しいな」

「そうか？あんまり変わらないと思うけど」

「いや、地面が土だからかな、下から来る熱がない分麓よりは遥かに涼しいよ」

「そういうもんなのか」

「そういうもんだよ」

夏目と田沼は黙った。その沈黙のまま、お互いの顔を見詰める。それは一二分間続き、次第に夏目の肩が揺れ始めた。

ぴくぴくと動く口角と鼻から溢れ出る少量のむず痒い息。その夏目の表情からも分かるように、色白の狭い額には「限界」という二文字が刻まれている。

「ふっ……もう駄目だ。幾らやっても敵わないなぁ田沼には」

「いや、夏目の無表情も中々辛かったぞ。もう少しで俺が吹き出しそうになった」

「にらめっこ」

二人同時に叫んでは、バシバシと己の膝を叩く両者。いつも間にか彼らの間では、知らぬ間にらめっこが始まっていたらしい。

「今回はいけると思ったんだけどな。西村に教えてもらったから」

「あ、ズリぃ。教えてもらうのは卑怯だぞ夏目」

「悪い悪い」

先程までの騒がしかった空間に、また静寂が覆いかさぶった。そしてどちらともなく両者己の角張った手を愛しい恋人の手に重ね、見詰めあう。

今度はあの時のようなふざけた眼差しではなく、真剣な、優しく愛しい壊れ物を見るような眼差しで。

さらさらと夏の風が二人の頬を撫でる。それを見た青い風鈴がチリリンとか細い澄んだ溜め息を重々しげに溢した。

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