切爆:治療法

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小説。
ヒロアカ、切爆。腐。
体育祭切島と爆豪の試合終了直後の話。
完全な好みです。本家のイメージと違ったらすみません。

「爆豪！ほんっとにすまなかった！」
体育祭試合終了後の控え室。俺は顔の前で両手を合わせて思いっきり深く頭を下げた。
「ア゛ァ゛？何がだよ」
「ほっぺたの話だよ！さっき硬化で思いっきり傷つけちまったから」
爆豪の眉間にどんどん皺が深く刻まれていく。普段から深いその皺は尋常じゃないくらい深くなった。視線がバカと言ってるのがありありと伝わる。
「ふざけんなよ、クソ髪ィ。こんくらいの傷でどうこうなるほどヤワじゃねェわ！！！」
「いや、それはわかってるんだけどよ…でもいくら実戦とはいえ爆豪に傷つけるなんて…」
「舐めてんじゃねェぞ、クソが！怪我なんて当たり前ェだろうがボケ！本気でやれや！」
「本気ではやったけどよ！でも、爆豪に傷つけるのはやだったんだよ」
そう言って俺は血のにじむ自分がつけた傷にそっと手を伸ばした。
「だからよ、せめて俺に手当てさせてくれねぇか？」
「ア゛？手当てなんて後でリカバリーガールのとこ行きゃすむ話だろうが」
「あー…リカバリーガールな…まあ、それはそうなんだけどよ…」
爆豪は急に歯切れの悪くなった俺を怪訝そうに見つめた。
「んだよ」
「いや…自分でつけた傷っていうのもあるんだけどよ…」
「だから何だ。早よ言えや」
「リカバリーガールの治療ってほら…あれじゃん？その…」
ストレートな表現をすればリカバリーガールはキスで治療をする。ただそのストレートな表現ができずにもごもご言っている俺を見抜いたように爆豪が口を開く。
「それが嫌だってか？」
「嫌ってわけじゃあねえんだけどよ、ちょっとの切り傷くらいで行かなくてもなあと」
「嫌なんだな」
は、と爆豪が笑った。笑ったと言っても片方の口の端を吊り上げただけの薄いものだったが。
ああ、男らしくねえ。唐突にそう思った。何で俺は思っていることの一つも言えずにいるのだろう。
そう考えたら一気に引っかかっていた言葉が溢れ出した。
「ああ、嫌だ！いくら治療のためでも他の奴が爆豪にキスすんのは嫉妬する！」
「お前…それはちょっと必死すぎんだろ…ふ、ふは、ははは」
爆豪が珍しいくらいに笑った。いくら必死だったとしてもそんなに笑うことだっただろうか。
「勝手にしろ」
「え？！いいのか！？」
「したくないならしなくていい」
「いや、するする！します！」
俺はダッシュで救急箱を取りに行き、手当てをした。慈しむようにそっと触れると爆豪はくすぐったそうにしていた。
「よし、終わり。これ返してきたら戻るか」
「ちょっとそれ貸せや」
そう言って爆豪が指差すのは俺の持っている救急箱。
「え、いいけど何でだ？」
「…お前の方が酷いだろうが、怪我。硬化してねえときに爆破当てたから」
「え、嘘だろ。手当てしてくれんの？」
「ア゛ァ゛？自分は我が儘通しといて俺には我慢しろってか？…殺すぞ」
「いやいや、そうじゃなくて！…てか、爆豪。我慢ってお前も嫉妬…」
Ｂoooom!!
言い切る前に爆破された。
「大人しく座れや」
「…はい、すみませんでした座ります」
いっそ敵じみた凄みに大人しく従った。
爆破で軽い火傷のようになった俺の胴体に包帯を巻く爆豪を見ていると少しドキドキした。目を伏せた爆豪はどこか綺麗だった。
「おらよ」
今までの丁寧さはどこに行ったのかバシン、と包帯の上から俺を叩いて立ち上がろうとする爆豪の肩に手を伸ばした。
「ん、爆豪。ちょっと待て」
「何だよ」
そう言って顔を上げた爆豪の頬の傷の横に。
Chu、と音を立ててキスをした。
「切島流リカバリーガール」
そう言ってにひ、と笑うと首まで真っ赤になった爆豪がキレた。
「何やってんだ、クソ髪ィ！調子乗ってんじゃねェぞ？！！！！！！！」
控え室の中で手の平で威嚇のような爆破を起こしながら追いかけてくる爆豪から逃げ回った。
これだけ真っ赤になっているとキレられたところで怖くはない。照れ隠しなのは知っている。

二人の争い（痴話喧嘩）は次の出場者が入って来るまで続いた。

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