【stprBL】嫌じゃないけど、切るの【橙紫】

◇とあ様の『ツギハギスタッカート』を聴きながら読むと、感情輸入できるかもです

◇一目惚れしたことある人ならわかってくれますかね…？



ななもり。side

『なーくん！』

好き、だった。

『なーくん…？』

小さい頃から。

『なー、くんっ…』

…ずっと、同じ人を一途に想ってた。









小学生のころ、初めて出会った。

「………なまえ」

な「……へ？」

「……きみ、なまえ、なんてゆうんや」

な「…な、ななもりっていうの」

正直、俺より背が高くて、ちょっぴり、こわいなぁとか、そんなこと考えてたんだけど。



「……そかぁ！俺ジェル！！」

…そんな思いは、ジェルくんのそのひとつだけの笑顔で、さらさらとほどけていった。





……うーん、なんだろーな、電流がはしって、

それが、ぶわって体に広がった感じが
したんだよねぇ。

正直、その感覚がはじめてで、

当時はなんだかよくわからなかった。

ジ「もー！ジェル、やでっ！しぇるじゃ貝殻になっちゃうやん！」

な「あ、そ、そっか…！」

ジ「……ふっw」

な「うぇ？」

ジ「…あははははっ！なんか、なーくんって、めっちゃ面白いんやな！」

な「へっ、は、なーくん？」

ジ「ななもりやし、なーくん！！……ありょ、もしかしてあだ名とかダメやったん？」

な「んんん！だいじょぶだよ！」

でもさー、

大きくなったら分かるものわかっちゃったんだよねぇ。




……あ、多分ね、中学生の文化祭。

たまたま、実行委員だったんだよね。

ジ「なーくんっ！よろしくなぁ！」

な「えっ、ジェルくんじゃん！！やった、ありがとう！よろしくねっ！」

ジ「おん！俺もなーくんと一緒だからめっちゃくちゃ嬉しいわぁ！」

な「えへへっ、ありがとー！」

正直、飛び上がるぐらい、嬉しかった。

…ああ、そして、自覚しちゃったとき。

な「っ、おっもいなぁ…w」

ジ「なーくーーん？」

な「へ、ジェルくっ…」

たまたま、思い荷物持っててさ。

な「つっ…！？あ！」

転んじゃいそうになったんだけど。



ﾄﾞｼｬｯ



ジ「つっ…！危ないやん！大丈夫か？」

な「……へ、ぁう、ぁ、うん」



支えてくれたジェルくんに。

その優しい瞳に。

俺の心は、甘く溶けていっちゃったんだよねぇ。



…もう、ずっと前から好きだったって

ずっと、好きだったって

とうとう分かっちゃったんだ。





………でもさ

そんなに人生うまくいくわけなくて

………確か、大学生のころ？だったっけ。

ジ「なーくん！聞いて！」

な「な、なにっ！ジェルくん！」

ジ「俺な！カノジョできた！」



な「………そうなんだー！」

ジ「？なんか間あったなw」

な「wそんなことなーいww」

…まあ、全然そんなことあったけど。

苦しいなー、と、嫌だなー、が、一緒に仲良く来ちゃったからねぇ。



な「おめでと」

本心じゃないおめでとうを言ったら

ジ「ありがとう！」

本心のありがとうが返ってきちゃって。

俺じゃ、“カノジョ”って壁は崩せないってわかっちゃったんだ。

だから________







、






、






、







………だから、

ジ「カノジョに明日プロポーズするねん！！」

その笑顔で、“今”、こちらを見ないでほしい。

な「そうなんだ！」



ああ、やっぱり



好きだったのは最初から俺だけか。

……君は、

ジ「俺、明日絶対成功させる！」

ずっと別の人を見ていたのね。

……こんな思いをするんだったら、いっそ、居なくなってくれても…

…いっそ、出会わなくても。

な「……よかったのになぁ…」

ジ「？なーくん？」





な「ジェルくん」

ジ「なんやー？」

な「…俺は変わらない、このままだよ。」

ジ「え？どゆこと？」

な「…んふふ、分からなくて、いいんだ！」

ジ「えー？なんか気になるやんけ」

な「じゃ俺、帰るわ！」

ジ「えっ？」

な「また、ね！」





友達で居たい。

恋愛対象で居たい。

………つぎはぎだらけで、ボロボロな心。



な「……あーあ」



もう、終わりにしよう。

な「やっぱ、ジェルくんっ！」

ジ「おん、なんやー！」

な「ジェルくん、」

ジ「なんっ………」

頭を抱えて。

カノジョに、決してバレないように。

優しく、静かに、儚い、“キス”を。





離れる、口と口。

離れる、コイゴコロ。



な「……ごめんね」

ジ「…………え？」









…………ずっと、ずっと君だけだよ。








、





、






、




な「愛“してた”」







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

作者です、こんばんは！

今回は失恋のお話、でしたー…

失恋っていやになっちゃいますし、苦しいんですよね〜…

この作品は「ツギハギスタッカート」という曲をイメージして作られたものです。

読者様のご気分に沿わなかったら申し訳ございません。

気が向いたらハッピーエンドを書きます。

読者様が言ってくれたら…頑張りまーす。

最後までこの作品をご観覧くださり、ありがとうございました。

他の杠-ゆずりは-の作品も見ていただけたら幸いです。





◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
気が向いたので続きからハッピーエンドを。

ジェル君の彼女さんには申し訳ないような()

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

ジェルside

ジ「……へ……？」

俺が気づいた時すでに遅し。

なーくんは、お金だけおいていなくなっていた。

まだ唇に残る、甘い甘い感触が、先程起こったことを物語るようで。

ジ「……っ…/////」

………顔にすごい勢いで熱がたまる。

消えることのない、熱。

ジ「………まじかよ…」



気付いてしまった。

いや、今気付いたから良かったのか。









俺はずっと、君が好きだったと言うことに。






……そして自覚したその瞬間、走馬灯かのように記憶が戻ってくる。



『ジェルくんっ！』

初めて俺の前で笑ってくれた、時。

とくんと、胸から音が鳴った。

『ジェルくん…っ！』

俺を心配してくれたとき。

わざわざ家まできて、お見舞いしてくれた。

『えへへっ…///じぇうくん…♪』

成人して一緒にお酒を飲んだ日。

君が酔っぱらって、俺が家まで担いでいったんだっけな。



ジ「っ……なぁ、く…」

いつの間にか、ぽろぽろとあふれでる涙。

次に立ち上がることに、そんなに時間はかからなかった。

ジ「………なーくん！」

……ここで、終いにはさせたくない。



“なーくんに言いたいことがある”



それだけをメールに打ち込んで、なーくんの家に無我夢中で向かった。

間の記憶がほぼなくて、

気づいた時には、俺はなーくんの家の前につったっていた。



ピンポンを鳴らすと、なーくんがいつもよりも低めの声でいい放つ。



な「…俺、今ジェル君と縁を切ったつもりだったんだけど？」

どこか冷たいその声は、俺の心にちくちくと痛みを与える。


ジ「…違、うんや」



な「……何が？」






ジ「…俺、なぁくんの、ことっ、ずっと好きやったんや、多分っ…」

自然とあふれでてくる想いと涙は、いっこうに止まる気配はなくて。



な「……え」

ジ「好きで、好きで、たまらないん」

な「カノジョ、居るのに？」

ジ「…俺、目の前のことに集中するタイプやからなぁ…」

な「自分で言うのね？」



ドア越しに聞こえる、なーくんの可愛らしい笑い声が、脳に響く。



ジ「ごめん、めっちゃ好きや」



な「……俺だって、ずっと、ずっと_____。」






なーくんから一切声色を変えずに告げられたその言葉が、真実かどうかは今はよくわからない。





ただ、抱き締めて良いかと聞いたら、良いと答えてくれるってことは、



……まだ、この青春は取り戻せるだろうか。