とある少女のお話。

あるところに少女がいました。

少女は孤独でした。

そんな少女のあだ名は『孤独姫』

誰も彼もが『孤独姫』と呼んでいました。

でも、少女はきちんと本名で呼んで欲しかったのです。

ですから、『孤独姫』と呼ぶ人間とは遊んでいませんでした。

そうすると、やはり少女は相変わらず孤独なのです。

そんなある時、誰かが少女に話しかけました。

「ねぇ、---ちゃんだよね？」

少女は、はっと顔を上げました。

誰かが呼んだ名前は、少女の名前だったのです。

少女の名前を呼んだ人物は、【狼王子】と呼ばれていた、シズク・マコトでした。

シズク・マコトは、一匹狼なところがあるため、そう呼ばれていたのです。

それをきっかけに、少女とシズク・マコトは仲良くなっていきました。

少女が、幸せだと思った日常は、唐突に終わりを迎えました。

なぜなら、シズク・マコトがﾀﾋんだのです。

「帰ってきてよ…！マコト…！」

そんな少女の叫びは、彼に届くわけもなく、かえってきたのは、しんと静まり返った静寂だけでした。

そして、少女は思い出しました。

少女と関わっていた人はみなﾀﾋんでいったことに。

それから、少女は人と関わることを辞めました。

自分から距離を置いていた少女に話しかけたとある少年少女がいました。

「ねぇ、---ちゃんだよね？」

シズク・マコトに似た声を持つ少年が少女に語りかけます。

あの日…少女と、シズク・マコトが出会った時の言葉を。

少女はまたもやはっと顔を上げます。

そこにはどこか、シズク・マコトの面影のある2人がいました。

「あたし達ね、マコトの姉弟なの。」

少女が告げます。

「兄さんの日記に書いてあったんです。『---が、みんなと溶け込めているか、ひとりじゃないか心配』と。」

少年は淡々と告げます。

「ねぇ、孤独姫ちゃん、仲良くしよーよ。」

少女がにこりと笑いこちらへ手を伸ばします。

少女は、だめだと、首を横に振ります。

「どうして？」

少女が問うと、少女はどこか儚く、悲しげな表情で、言いました。

「私と関わった人は、みんなﾀﾋんじゃったから。」

少年少女は、顔を見合せます。

1分？10分？それとも1時間？

少女には、1時間と言っても過言ではないくらいの長い時間でした。

その沈黙を破ったのは、ニコリと笑っていた少女でした。

「そんなわけない。だって、そしたらどこかの店員さんも、先生も、クラスメイトだって、みんなﾀﾋんじゃってるじゃん？…あのね、人間は、いつかﾀﾋぬんだから。孤独姫ちゃんのせいじゃないよ。」

そう言われ、少女は、目に涙をうかべます。

「…ほんとに…？」

と少女が問うと、少女は満面の笑みで答えます。

「もちろん！」

それから、少女は、自己紹介を始めます。

「あたしは、シズク・エリナ！んで、こっちが…」

「シズク・エイトです。」

少年も名前を述べました。

少女はにこにこと笑みを浮かべています。

「ねぇ、孤独姫ちゃんの名前は？」

あと名乗っていないのは、少女だけです。

少女は、2人をみて、ふわりと微笑み告げました。

「私の名前は---」