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「妾は輝ける正道の都市の主、不夜城のアサシン！ 今はそれで良い。真名を教えれば貴様は妾に平伏したまま何もできぬようになるであろうからな！」
現れたのは少女であり、そう言ったのも少女である。
目を数度瞬かせたYOUは困惑した。
不夜城とは、中国にあったとされる都市である。
しかしYOUは英国出身。
アジアのことなど国名と有名な出来事ぐらいしか覚えていないため、例え少女の名前を聞いたところで驚くこともない。
「えっと……」
「む、妾が召喚されたというのにそのような態度とは。もっと喜ぶなり敬うなりするのが正しい反応じゃぞ！」
「え？ あ、はい。応えてくださりありがとうございます？」
「いささ敬意が足らぬように感じるが今回のみ不問にいたすぞ！ マスターの名を妾に教えたまえ」
どうにもリズムが狂うというのかなんというのか。
主導権がサーヴァントになっているような気がするとYOUは感じているのだが気のせいだろう。
やや疑問を抱きつつ、YOUは右手を差し出して名乗った。
「YOU・エルメロイ・アーチボルトと申します。よろしくお願いしますねアサシン」
「うむ！」
色々とお世話、ではないがイギリスの美味しいお菓子や紅茶を片手に少しずつアサシンを懐柔していった功績によってアサシンの真名を聞くことにYOUは成功した。
YOUが召喚したアサシンのサーヴァントの少女は武則天という、中国の歴史上唯一の女帝らしい。
決して餌付けして聞き出した訳ではない、と明記しておこう。
「YOUー！」
「アサシン、今は授業中です。少しだけでいいのでお静かにしていただけないでしょうか」
今現在、YOUは聖杯戦争のためアーチボルト家の屋敷で色々と下準備をしていた。
兄であるケイネスに無理を言って魔術の調整や魔術礼装の使い方の教えを乞い、特別に授業をしてもらっていた。
尊敬する兄に自分のために授業をしてもらえるということに非常に感動しつつ、にこにこと笑顔でケイネスのマンツーマンの特別授業を受講するのだが、面白くないのはYOUのサーヴァントであるアサシンである。
最初こそは知らない話ということで大人しくYOUと共に着席してケイネスの話を静聴していたのだが、徐々につまらなくなってきたのだろう。
マスターであるYOUに話し掛けたりちょっかいをかけたりとしてきているのだ。
ぷくりと頬を膨れてむくれてしまったアサシンにYOUは彼女が召喚に応じてから持ち歩くようになったお菓子をそっと差し出すのである。
「む。そ、そのようなもので妾の機嫌を取ろうなどとそうはいかぬからな！」
と言いつつもちらちらと手に乗っているお菓子、有名銘柄のチョコを見ているアサシン。
彼女がこの銘柄のお菓子が好きなのは既に把握済みなので更にもう一つ見せると更にお菓子をちらちらと見始めている。
ならとどめと言う風に更に二個、合計四個見せると。
「は、早く終わらせるがよい！」
YOUの手にあるお菓子を取って、大人しくなったのである。
ほっと息を吐けばケイネスがYOUの名を呼ぶ。
「は、はい」
「続けてよいかな？ それとも一度休憩を挟むべきかね？」
「休憩！ ケイネス、休憩をマスターに与えたまえ！」
先程YOUに与えてもらったお菓子を頬張り、目を輝かせて発言するアサシンに対して眉間に皺を寄せつつ三十分後に再開とYOUに言い残して部屋を出ていった。
そして入れ替わるように、まさかのソラウが部屋に現れたことにYOUは目を剥く。
ソラウはYOUとアサシンを一瞥しただけで直ぐに部屋を見渡すといないのねと一言零した。
「どうかしましたかソラウさん」
「……ケイネスは？」
ソラウさんが兄様を探している!?
更に目を剥くYOUは心の中でケイネスに戻ってきてと呼び掛けるがもちろんその心の声はケイネスに届くはずもなく。
「いないの？」
「……はい。でも三十分後には此方へ戻ってこられます」
「……」
不機嫌そうに顔を歪めたソラウに対し、これ以上夫婦の関係に亀裂が入るのは非常に良くない。
むしろ非常に悪い。
関心することなくお菓子を堪能しているアサシンに声を掛けた。
「あ、アサシン。申し訳ありませんが兄様を此方に呼んできていただけませんか？」
「何故じゃ？ 四半刻後に戻ってくるのであろう？ なら妾が呼ばずとも」
「アサシン、あとで箱でお菓子をあげますので兄様を呼ん」
「し、仕方がないのう！ 約束じゃぞYOU！」
満面の笑みを浮かべて霊体化し、部屋を出ていったアサシンに出来るだけ早くと念話で言いつつ不機嫌そうなソラウにどうかここで待っていてほしいと説得するYOU。
ケイネスがアサシンを連れて戻ってきたのはYOUがソラウを引き止めて五分後のことである。
「ソラウ、私に用があると伺ったのだが」
「もう良いわ。それほど急ぎでもないし」
拒絶の反応に眉間に皺を寄せてYOUとアサシンを一瞥するケイネスに、これはまずいとYOUがソラウに話し掛けた。
「ソラウさん、兄様も急いで来て下さった訳ですし言われては」
「大した用じゃないわ」
いやあの表情はそこそこ重要な用件だと思うのだけど。
YOUはそうつっこみたいのをどうにか我慢し、それとなくソラウのケイネスへの用件を言ってもらえるように尽力した。
結果的にはソラウの用件は彼女の言う通り些細なことであったが、たかだかこのような些細なことで夫婦の関係に亀裂が入るような事態にもなりかねない。
「……アサシン、私がいなくなったらお二人が離婚されそうで怖いのですけど」
「そのようなもの、なるようにしかならぬ。あの二人の問題にマスターが首を出す方がどうかしていると妾は思うが、それより約束の品を所望するぞ！」
不安に駆られながらもYOUはアサシンに約束の品を渡したのである。
(武則天の場合end)
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「妾は輝ける正道の都市の主、不夜城のアサシン！ 今はそれで良い。真名を教えれば貴様は妾に平伏したまま何もできぬようになるであろうからな！」
現れたのは少女であり、そう言ったのも少女である。
目を数度瞬かせたYOUは困惑した。
不夜城とは、中国にあったとされる都市である。
しかしYOUは英国出身。
アジアのことなど国名と有名な出来事ぐらいしか覚えていないため、例え少女の名前を聞いたところで驚くこともない。
「えっと……」
「む、妾が召喚されたというのにそのような態度とは。もっと喜ぶなり敬うなりするのが正しい反応じゃぞ！」
「え？ あ、はい。応えてくださりありがとうございます？」
「いささ敬意が足らぬように感じるが今回のみ不問にいたすぞ！ マスターの名を妾に教えたまえ」
どうにもリズムが狂うというのかなんというのか。
主導権がサーヴァントになっているような気がするとYOUは感じているのだが気のせいだろう。
やや疑問を抱きつつ、YOUは右手を差し出して名乗った。
「YOU・エルメロイ・アーチボルトと申します。よろしくお願いしますねアサシン」
「うむ！」
色々とお世話、ではないがイギリスの美味しいお菓子や紅茶を片手に少しずつアサシンを懐柔していった功績によってアサシンの真名を聞くことにYOUは成功した。
YOUが召喚したアサシンのサーヴァントの少女は武則天という、中国の歴史上唯一の女帝らしい。
決して餌付けして聞き出した訳ではない、と明記しておこう。
「YOUー！」
「アサシン、今は授業中です。少しだけでいいのでお静かにしていただけないでしょうか」
今現在、YOUは聖杯戦争のためアーチボルト家の屋敷で色々と下準備をしていた。
兄であるケイネスに無理を言って魔術の調整や魔術礼装の使い方の教えを乞い、特別に授業をしてもらっていた。
尊敬する兄に自分のために授業をしてもらえるということに非常に感動しつつ、にこにこと笑顔でケイネスのマンツーマンの特別授業を受講するのだが、面白くないのはYOUのサーヴァントであるアサシンである。
最初こそは知らない話ということで大人しくYOUと共に着席してケイネスの話を静聴していたのだが、徐々につまらなくなってきたのだろう。
マスターであるYOUに話し掛けたりちょっかいをかけたりとしてきているのだ。
ぷくりと頬を膨れてむくれてしまったアサシンにYOUは彼女が召喚に応じてから持ち歩くようになったお菓子をそっと差し出すのである。
「む。そ、そのようなもので妾の機嫌を取ろうなどとそうはいかぬからな！」
と言いつつもちらちらと手に乗っているお菓子、有名銘柄のチョコを見ているアサシン。
彼女がこの銘柄のお菓子が好きなのは既に把握済みなので更にもう一つ見せると更にお菓子をちらちらと見始めている。
ならとどめと言う風に更に二個、合計四個見せると。
「は、早く終わらせるがよい！」
YOUの手にあるお菓子を取って、大人しくなったのである。
ほっと息を吐けばケイネスがYOUの名を呼ぶ。
「は、はい」
「続けてよいかな？ それとも一度休憩を挟むべきかね？」
「休憩！ ケイネス、休憩をマスターに与えたまえ！」
先程YOUに与えてもらったお菓子を頬張り、目を輝かせて発言するアサシンに対して眉間に皺を寄せつつ三十分後に再開とYOUに言い残して部屋を出ていった。
そして入れ替わるように、まさかのソラウが部屋に現れたことにYOUは目を剥く。
ソラウはYOUとアサシンを一瞥しただけで直ぐに部屋を見渡すといないのねと一言零した。
「どうかしましたかソラウさん」
「……ケイネスは？」
ソラウさんが兄様を探している!?
更に目を剥くYOUは心の中でケイネスに戻ってきてと呼び掛けるがもちろんその心の声はケイネスに届くはずもなく。
「いないの？」
「……はい。でも三十分後には此方へ戻ってこられます」
「……」
不機嫌そうに顔を歪めたソラウに対し、これ以上夫婦の関係に亀裂が入るのは非常に良くない。
むしろ非常に悪い。
関心することなくお菓子を堪能しているアサシンに声を掛けた。
「あ、アサシン。申し訳ありませんが兄様を此方に呼んできていただけませんか？」
「何故じゃ？ 四半刻後に戻ってくるのであろう？ なら妾が呼ばずとも」
「アサシン、あとで箱でお菓子をあげますので兄様を呼ん」
「し、仕方がないのう！ 約束じゃぞYOU！」
満面の笑みを浮かべて霊体化し、部屋を出ていったアサシンに出来るだけ早くと念話で言いつつ不機嫌そうなソラウにどうかここで待っていてほしいと説得するYOU。
ケイネスがアサシンを連れて戻ってきたのはYOUがソラウを引き止めて五分後のことである。
「ソラウ、私に用があると伺ったのだが」
「もう良いわ。それほど急ぎでもないし」
拒絶の反応に眉間に皺を寄せてYOUとアサシンを一瞥するケイネスに、これはまずいとYOUがソラウに話し掛けた。
「ソラウさん、兄様も急いで来て下さった訳ですし言われては」
「大した用じゃないわ」
いやあの表情はそこそこ重要な用件だと思うのだけど。
YOUはそうつっこみたいのをどうにか我慢し、それとなくソラウのケイネスへの用件を言ってもらえるように尽力した。
結果的にはソラウの用件は彼女の言う通り些細なことであったが、たかだかこのような些細なことで夫婦の関係に亀裂が入るような事態にもなりかねない。
「……アサシン、私がいなくなったらお二人が離婚されそうで怖いのですけど」
「そのようなもの、なるようにしかならぬ。あの二人の問題にマスターが首を出す方がどうかしていると妾は思うが、それより約束の品を所望するぞ！」
不安に駆られながらもYOUはアサシンに約束の品を渡したのである。
(武則天の場合end)
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作者名：翔べないペンギン | 作成日時：2024年3月26日 0時
