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ギギギ…
歩く度に軋んだ音がする廊下。
ふぅ…と1つ息をつき、ドアノブを回す。
錆びているのか、上手く回らない。
ぐっと力を入れてなんとか開ける。
埃が舞い上がる。
『ケホッ…ケホ、、』
噎せながら、くるりと辺りを見渡す。
埃のつもった棚や、汚れた窓。
私が「副委員長」として使う、躑躅高校の図書室。
誰もいないのかともう少し中に入ってみる。
すると、受け付けの椅子に座り本を読んでいる女の子が見えた。
銀髪に紺色の瞳。それから、特徴的な狐のお面。
真剣な表情で本を読む彼女にどこか懐かしさを感じ、しばらく見とれてしまっていた。
「…？」
気配を感じたのか顔をあげた彼女と目が合う。
数秒の沈黙。気まずい雰囲気をなんとかしようと、私は口を開く。
『…は、初めまして、副委員長の西条 紀伊です！』
笑顔を作って言ったはずが、彼女は困惑のような表情を浮かべた。
『えっと、お名前は？』
「天乃 由莉奈」
その名前を聞いた瞬間、私は言葉を失った。
そうだ。この狐面。髪の色。髪のメッシュ。目の色。
『…由莉奈』
「紀伊、久しぶり」
かつて仲の良かった、幼なじみ。
小学校に上がると共に私が引っ越しちゃって。
そのまま1度も遊んでいなかった。
随分と大人っぽくなったなぁ、なんて考える。
私だって同じだけ年をとっているはずなのに。
『委員長になったんだっけ。しっかりしてる人なんだろうなって思ってたけど…
由莉奈だったんだ。意外かも。』
「まあねー…なんでなっちゃったんだろう、って少し思ったけど」
しばらく談笑を続ける。
懐かしい。10年以上ぶりだろうけど、全く変わってない。
由莉奈の雰囲気とか、口調とか。
見た目だって、大人っぽくなったけど、好みは多分あの頃から変わってない。
5歳くらいの時に付け始めたお面。
あの頃は全く気になってなかったけれど、今みると確かに異色だ。
いじめられていた…なんていう話を聞いたけれど、これが原因だったのだろうか。
特に気にならないし軽蔑なんてするわけもない。
でも、もしも彼女がこれで傷ついたら…とは思う。
まあ、それほど気にしていそうな素振りもないけれど。
「というか、今更だけど紀伊は副委員長なんだ〜
なんか…こういうのに興味あるイメージなかったなぁ」
『まあ本が好きだからさ。なんとなくで入っちゃった』
「ふふ、責任感とかないの？笑」
『由莉奈こそ、しっかりはしてたけど目立つの嫌いだったじゃんか』
「それもそうかあ…」
楽しそうに話している由莉奈を見て、私も嬉しくなった。
でも…そうだ。由莉奈は目立つのが好きなタイプではない。
いつも面倒な事を押し付けられて困っていた気がする。
幼稚園の私でも、それはなんとなく分かっていた。
あの頃の私には、彼女を助けられなかった。
でも、今なら。
幼なじみ。そして、委員長と副委員長。
副委員長は、誰よりも委員長に近くて、助けられる存在なのだから。
今の私ならできる。
私はその日、彼女の隣で彼女を支えると、決意した。
由莉奈side
『うわ…ここまでひどいとは…』
今私は躑躅高校の図書室にいる。
そう。私が“委員長”として入る図書委員の拠点…でいいのか分からないけど、そこにいる。
『まぁでも、委員長を受け持ったからにはしっかりやらなきゃ！
さて、せっかくだから本でも読もうかな。』
そう言って、私は本棚の中から良さそうな小説を2冊ほど持って受付椅子に座った。
「ケホッ…ケホ、、」
一冊目の中盤あたりで図書室に誰か入ってきた。
図書委員かな…挨拶しなきゃだと思うけど今いいところだからな…
そう思って私は小説をまた読み始め…ようと思ったら、視線を感じた。
『……？』
…えっと、どこかで会いました？
見た目が私の幼馴染に似てるのだけど…
いや、だったら何で1、2年の時に気付かなかったんだ
…まぁでも、紀伊のはずが「は、初めまして、
副委員長の西条紀伊です！」
…紀伊だ。初めましてじゃない。
ほんとに紀伊だ。
「えっと、お名前は？」
『…天乃由莉奈。』
冷たすぎだろ私。
ってか紀伊驚いてない？私的にはそんなつもりなかったんだけど。
「由莉奈…」
『紀伊、久しぶり』
本当に、久しぶりねぇ。
小学生の時に紀伊が引っ越してから、音沙汰無しだったから。
会えて嬉しい。相変わらず可愛いねぇ。
「委員長になったんだっけ。しっかりしてる人なんだろうなって思ってたけど…
由莉奈だったんだ。意外かも。」
『まあねー…なんでなっちゃったんだろう、って少し思ったけど』
しばらく談笑を続ける。
懐かしい。とても懐かしい。
…11,12年ぶりくらい？
…それにしても、全く変わってないなぁ。
あのちっちゃい耳も、長い前髪も。
『というか、今更だけど紀伊は副委員長なんだ〜
なんか…こういうのに興味あるイメージなかったなぁ』
「まあ本が好きだからさ。なんとなくで入っちゃった」
『ふふ、責任感とかないの？笑』
「由莉奈こそ、しっかりはしてたけど目立つの嫌いだったじゃんか」
やる人いなさそうだったから委員長やったんだけどねw
『それもそうかあ…』
なんだかんだ、紀伊と再会できて嬉しいと思ってる。
紀伊と一緒ならこの先頑張っていける気がする。
（よーし！躑躅高校図書委員長、天乃由莉奈、
がんばるぞい！）
そう強く思いながら、そっと狐面を整えた。
歩く度に軋んだ音がする廊下。
ふぅ…と1つ息をつき、ドアノブを回す。
錆びているのか、上手く回らない。
ぐっと力を入れてなんとか開ける。
埃が舞い上がる。
『ケホッ…ケホ、、』
噎せながら、くるりと辺りを見渡す。
埃のつもった棚や、汚れた窓。
私が「副委員長」として使う、躑躅高校の図書室。
誰もいないのかともう少し中に入ってみる。
すると、受け付けの椅子に座り本を読んでいる女の子が見えた。
銀髪に紺色の瞳。それから、特徴的な狐のお面。
真剣な表情で本を読む彼女にどこか懐かしさを感じ、しばらく見とれてしまっていた。
「…？」
気配を感じたのか顔をあげた彼女と目が合う。
数秒の沈黙。気まずい雰囲気をなんとかしようと、私は口を開く。
『…は、初めまして、副委員長の西条 紀伊です！』
笑顔を作って言ったはずが、彼女は困惑のような表情を浮かべた。
『えっと、お名前は？』
「天乃 由莉奈」
その名前を聞いた瞬間、私は言葉を失った。
そうだ。この狐面。髪の色。髪のメッシュ。目の色。
『…由莉奈』
「紀伊、久しぶり」
かつて仲の良かった、幼なじみ。
小学校に上がると共に私が引っ越しちゃって。
そのまま1度も遊んでいなかった。
随分と大人っぽくなったなぁ、なんて考える。
私だって同じだけ年をとっているはずなのに。
『委員長になったんだっけ。しっかりしてる人なんだろうなって思ってたけど…
由莉奈だったんだ。意外かも。』
「まあねー…なんでなっちゃったんだろう、って少し思ったけど」
しばらく談笑を続ける。
懐かしい。10年以上ぶりだろうけど、全く変わってない。
由莉奈の雰囲気とか、口調とか。
見た目だって、大人っぽくなったけど、好みは多分あの頃から変わってない。
5歳くらいの時に付け始めたお面。
あの頃は全く気になってなかったけれど、今みると確かに異色だ。
いじめられていた…なんていう話を聞いたけれど、これが原因だったのだろうか。
特に気にならないし軽蔑なんてするわけもない。
でも、もしも彼女がこれで傷ついたら…とは思う。
まあ、それほど気にしていそうな素振りもないけれど。
「というか、今更だけど紀伊は副委員長なんだ〜
なんか…こういうのに興味あるイメージなかったなぁ」
『まあ本が好きだからさ。なんとなくで入っちゃった』
「ふふ、責任感とかないの？笑」
『由莉奈こそ、しっかりはしてたけど目立つの嫌いだったじゃんか』
「それもそうかあ…」
楽しそうに話している由莉奈を見て、私も嬉しくなった。
でも…そうだ。由莉奈は目立つのが好きなタイプではない。
いつも面倒な事を押し付けられて困っていた気がする。
幼稚園の私でも、それはなんとなく分かっていた。
あの頃の私には、彼女を助けられなかった。
でも、今なら。
幼なじみ。そして、委員長と副委員長。
副委員長は、誰よりも委員長に近くて、助けられる存在なのだから。
今の私ならできる。
私はその日、彼女の隣で彼女を支えると、決意した。
由莉奈side
『うわ…ここまでひどいとは…』
今私は躑躅高校の図書室にいる。
そう。私が“委員長”として入る図書委員の拠点…でいいのか分からないけど、そこにいる。
『まぁでも、委員長を受け持ったからにはしっかりやらなきゃ！
さて、せっかくだから本でも読もうかな。』
そう言って、私は本棚の中から良さそうな小説を2冊ほど持って受付椅子に座った。
「ケホッ…ケホ、、」
一冊目の中盤あたりで図書室に誰か入ってきた。
図書委員かな…挨拶しなきゃだと思うけど今いいところだからな…
そう思って私は小説をまた読み始め…ようと思ったら、視線を感じた。
『……？』
…えっと、どこかで会いました？
見た目が私の幼馴染に似てるのだけど…
いや、だったら何で1、2年の時に気付かなかったんだ
…まぁでも、紀伊のはずが「は、初めまして、
副委員長の西条紀伊です！」
…紀伊だ。初めましてじゃない。
ほんとに紀伊だ。
「えっと、お名前は？」
『…天乃由莉奈。』
冷たすぎだろ私。
ってか紀伊驚いてない？私的にはそんなつもりなかったんだけど。
「由莉奈…」
『紀伊、久しぶり』
本当に、久しぶりねぇ。
小学生の時に紀伊が引っ越してから、音沙汰無しだったから。
会えて嬉しい。相変わらず可愛いねぇ。
「委員長になったんだっけ。しっかりしてる人なんだろうなって思ってたけど…
由莉奈だったんだ。意外かも。」
『まあねー…なんでなっちゃったんだろう、って少し思ったけど』
しばらく談笑を続ける。
懐かしい。とても懐かしい。
…11,12年ぶりくらい？
…それにしても、全く変わってないなぁ。
あのちっちゃい耳も、長い前髪も。
『というか、今更だけど紀伊は副委員長なんだ〜
なんか…こういうのに興味あるイメージなかったなぁ』
「まあ本が好きだからさ。なんとなくで入っちゃった」
『ふふ、責任感とかないの？笑』
「由莉奈こそ、しっかりはしてたけど目立つの嫌いだったじゃんか」
やる人いなさそうだったから委員長やったんだけどねw
『それもそうかあ…』
なんだかんだ、紀伊と再会できて嬉しいと思ってる。
紀伊と一緒ならこの先頑張っていける気がする。
（よーし！躑躅高校図書委員長、天乃由莉奈、
がんばるぞい！）
そう強く思いながら、そっと狐面を整えた。
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設定タグ：躑躅高校図書委員会 , オリジナル作品
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作者名：きい x他1人 | 作成日時：2020年8月13日 14時
