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○○のホームページだよ
パン、とアタックの音がまばらに聞こえる。
部活の時間は終わり、居残り練習組と帰宅組で別れた。私はもちろん居残り組。梨華先輩がいるからね。高崎梨華先輩は私の1つ上の先輩。女子テニス部部長も生徒会長もしていて、しっかりしてる。しかも美人だから男女共に人気。
「梨華先輩、今度サーブ見てくれませんか?次の大会に向けて、新技作りたいんです。」
「もちろん!うちでよければ幾らでも見るでー。」
先輩は次の大会で引退。絶対に全国大会まで連れて行くんだ。
「本当ですか!嬉しいです!明日の帰りって大丈夫ですか?」
「あー…明日は先約があるから、明後日でもいい?」
「梨華ー!!一緒に帰らん?」
でた。梨華先輩の彼氏、白石蔵之介先輩。成績優秀、スポーツ万能。人望もある完璧人間。梨華先輩と超お似合いって言われてるんだよね。
「わかったー。
梓ちゃん、先上がるわ。」
「じゃあ私もそろそろ上がります。」
先輩上がるなら私も上がろ。


着替えて更衣室から出ると、フェンスの横に3人の人影が見えた。逆光で姿が分からないけれど、話し声が聞こえる。
「今日の練習めっちゃ疲れたわー。」
「体力落ちたんじゃないっすか。」
「ひっど!なんや先輩に向かって!」
「五月蝿いで、2人とも。もう少し黙り。」
…白石先輩、余計なことしてくれたな。これ絶対光と忍足先輩じゃん。
「蔵之介、お待たせ。」
「あんまり待ってへんし、気にせんで。」
「梨華先輩、失礼しますね。また明日。」
「ちょいちょい、待ちや。財前も連れてきてやったんやから、一緒に帰ったらどうや。」
「別に約束してなかったし、いいかなーと思ったんですけどねー。」
確かに光は私の彼氏だ。でも、白石先輩のところみたいに正しく真っ当なお付き合いを続けているわけでもない。私は1人で帰りたい。帰してくれ。
「いつもと変わらず冷静やな。もうちょい笑えばええのに。」
確かにあんたの彼女ほどは笑わないけども。失礼じゃないですかね、白石先輩よ。
「梓が拗ねてるんで、そこら辺にしたってください。」
「はぁ?拗ねてないし。なんで私が光に助けられたみたいな雰囲気になってんのよ。」
「てかなー白石。結構河野ちゃんモテるんやで。野球部のキャプテンがクールビューティでええなぁ言っとった。」
…忍足先輩も余計なこと言いよる。さっさと話題変えるが吉。
「てかなんで忍足先輩いるんですか?」
「しらんけど。勝手についてきよった。」
「財前お前本当失礼なやっちゃな!」
「本当のこと言っただけっすわ。」
本当よく続くなぁ、あの言い争い。梨華先輩のところに避難避難。少し離れたところにいる梨華先輩と白石先輩の元へ向かう。
「先輩避難してきましたー。助けてください。」
「梓ちゃんおいでおいで!」
やっぱりこっちきてよかった。
「梓ちゃんって大阪来て2年経ったんやろ?」
「そうですね。中学校入学と同時にこっち来たので。」
「まだ大阪弁馴染まん?」
今!私は梨華先輩と喋ってるの!白石先輩入ってこんで!まぁ答えるけども。
「名古屋の方が住んでた年数長いですからね。別に喋れないことはないんですけど。あ、でも最近混ざるようになりました。」
「そっかぁ。たいへんやな。」
……。せっかく梨華先輩と話してるのに後ろの2人言い争そってんな!まだやってんのか。
「白石先輩、なんで2人連れてきたんですか。めちゃくちゃ五月蝿いんですけど。」
「あー、財前引っ張ってくるのに謙也に付き合うてもらったねん。ここまでうるさなるのは計算外やったな。」
「まぁ仲良いならいいんちゃう?」
梨華先輩がそう言うならそうなのかな。
「そうですかね…」
「本当梓ちゃんは梨華のこと好きやな!」
「そうですよー、梨華先輩は憧れですから。」
本当口挟まないでくれ。頼む。
「あ、分かった!」
忍足先輩五月蝿い!!
ぐるんと首を回すと衝撃的な言葉が耳に入った。
「お前俺が河野ちゃんばっか褒めるから焼きもち焼いてんねや!」
「は?ちゃうし。」
うっわー。財前の顔がやばい。破綻してる。クールビューティとは程遠いなぁ。
「安心しぃ。財前もかわええ後輩やからなー?クールビューティやしなー?」
「は、えっ、あぅ」
あ、これはまずい。笑ってる場合じゃないわ。しゃーない、さっきの借りは返したるか。
「け、けんやさん。あの、」
「光。私今から予定あるから、帰るならさっさと帰るよ。
先輩方失礼しますね。」
「…え、あぁ、うん。先帰りますわ。ほなさよなら。」
光の手首を引っ掴んで校門をくぐる。そのまま無言で歩くこと10分ちょっと。神社の裏にある公園に着いた。人気が少なく、私達の隠れ家みたいになってる。
「…で、大丈夫?」
「あー、うん。だいぶ落ち着いたわ。ありがとう。」
へらへらと笑ってはいるが、まだ顔色が悪い。
適当にブランコに座らせて自販へ走る。
「ちょい待っとき。」
真っ赤な自販機にチャリンと小銭を突っ込む。自分用のポンタとあいつ用の…白玉ぜんざいないや。汁粉でいいかな。ここの自販機は、汁粉の冷たいのを売っている。珍しい。
ピッピッっとボタンを押してジュースを買う。
「ほら。私の奢り。ありがたく飲みなよ。」
1、2メートル先にいる財前に放り投げる。
「ナイスキャッチ。」
…こいつ、汁粉って分かった瞬間に満面の笑み浮かべてやがる。現金なやつやな。
立ってるのも疲れるから、光の隣のブランコに座る。
「で、今のご気分は?」
「なんなの!謙也さん!俺の気持ちも知らんと、あんな事ホイホイ言いよって!…まじでありえん。本当辛いわ。あーあ、なんで俺あんな奴を好きなんやろ。」
「さぁ。好きなんだから仕方ないでしょ。」
「ほんまありがとう、雰囲気に呑まれて告白するとこやったわ。」
「別に。気にしないで。」
光は恋をしている。忍足先輩に。私と出会う前から。光はノンケ、忍足先輩もノンケ。男が好きなんじゃない、お前だから好きなんだってやつ。はー、ロマンティックやなぁ。付き合っちゃえばいいのに。…なんて軽々しく言えればいいんだけど。
「てか今日は部長が本当すまんな。嫌なとこ見せたやろ。あそこラブラブやから。」
「んーん、いつものことじゃん。変に気を使わないで。梨華先輩は白石先輩が好きなんだから。私には勝ち目ない。」
私も叶わない恋をしているから。私の想い人は梨華先輩。私は光とは違ってレズ。女の子しか好きになれない。
そんな私達が付き合っている理由はたった1つ。自分の好きな人を諦めるため。同性が好きなんて、今の社会では中々受け入れられにくい。ましてや梨華先輩には彼氏がいて。忍足先輩は医者の息子。自分の幸せと相手の幸せ、自分の将来と相手の将来のどっちが大切なんて目に見えているから。だから。だから私達は諦めなきゃ。忘れなきゃ。まぁ、私も光も諦めきれないんだけどね。私は梨華先輩に褒められた長い髪を未だに切れなくて。光は忍足先輩から貰ったピアスが捨てれない。
「女々しいなぁ、私も、光も。なぁ?」
「せやな。」
ブランコを漕ぐとキィと鎖がなる。夕日がもうすぐ落ちそうだ。私の、私達の恋心も落ちて、なくなっちゃえばいいのに。
結局夜暗くなるまで私達は公園にいた。

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作者名:みちばた。 | 作成日時:2017年7月30日 0時

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