おはなし

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私は学生だ。なので、夜遅くまで勉強をしていることもあり、よく母親が夜食を持ってきてくれた。

私の部屋は階段をのぼった突き当たりにあるので、誰かが来たらすぐわかる。

今日も部屋で勉強をしていた。

すると、ぎし、ぎし、と階段をのぼってくる音がした。

勝手にドアを開けられ案の定入ってきたのは母親だ。

母親は夜食を机に置くと、「頑張ってね」との一言を残しそそくさと下に降りていった。

すごく有り難いことなのだが、毎回ノックもせずに勝手に入ってくるのは少し困りものだ。

私はその後も勉強に励み、寝床につく頃にはすでに午前0時を回っていた。布団に入り、眠りにつこうとしていたそのとき。

ドアの向こうからぎし、ぎし、と誰かが階段をのぼってくる音がする。

母親かな？

こんな時間に何の用だろう。

そんなことを考えている内に、その足音は私の部屋の前で止まった。

　

「開けてぇ～？」

母親の声だ。

いつもは勝手にずかずか入ってくるのに声をかけてくるとは珍しい。

そう思ったものの、布団の中の私は立ち上がるのが面倒だったので私は母親の呼び掛けには一切返事をせずに無視を通した。何より、急ぎの用事なら勝手に入ってくるだろう。

「開けてぇ～？」

さっきの調子でもう一度。

また何度か呼んでいたが疲れていた私は断固としてドアを開けに行かなかった。

しばらくして母親の声がなくなり、足音が一階へと遠ざかっていった。

やっと諦めたか。なんの用事だったかはまた明日の朝聞こう。

そう思いようやく眠りにつこうとすると

今度は猫の鳴き声が聞こえた。

ニャーン

うちの猫だ。

母親が二階に来ている間にケージの下を抜けて出てきてしまったのだろう。

これで何度目だ。まったく、うちの子は。

ニャーン

鳴きながら、ドアをカリカリひっかいている。

こうなるとうちの子はしつこい。さすがに猫を放っておくのは可哀想だし私もこのままじゃ安眠できない。

そう思い、私は布団を出た。未だに鳴き続ける猫に急かされるようにドアの前に立つと、ドアノブに手をかける。

私はその時、あることに気が付いた。

　

おかしい。

私はふと、鳴き声の位置に違和感を覚えた。

猫の鳴き声が聞こえる位置が、なんだか高すぎる。

ニャーン

その猫の鳴き声は、少なくとも私の頭より高い位置から発せられていた。

うちの子じゃない。

というより、

猫じゃない。

私はとっさに

「だれ？」

と聞いてしまった。

すると、

　

「どうして開けてくれないのォ？」

薄いドアの向こうからは動物でもなんでもない、はっきりとした男の声が聞こえた。

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