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私には2人の兄がいます。
2人とも、私の自慢の兄です。
2人とも、スポーツ特待で高校に進学しました。
長男は国学院、次男は作新学院です。
長男は2015年の6月、結婚して家を出ました。
相手は、塗装会社に勤める同い年の女性です。
私にとっては、美人で優しい、大好きな義理のお姉ちゃんでした。
長男夫婦は仲が良く、幸せに満ちていました。
しかし、2016年4月、兄は仕事中に2階から転落、
腰の骨が破裂し、2度と歩けなくなる可能性が高い状態になってしまったのです。
母から聞いた話はこうでした。
兄は、新しく建てられた2階建ての家の塗装をすることになった。
当然、屋根も塗らないといけないので、建設会社に足場をつけるよう依頼した。
でも、建設会社には金が足りないから無理、と断られ、仕方なく足場なしで屋根の塗装をしていた。
この事故には兄の不注意もあったのかもしれない。
兄は、ペンキを塗ったばかりのところに足を置いてしまい、屋根から転落した。
そして、ブロック塀に腰と頭を打ち付けたのだ。
幸い、頭に以上は見られなかった。
その代わり、腰の骨が破裂、2度と歩けないかもしれない可能性が出てきてしまった。
腰の骨が破裂したことで、両足の感覚神経が切れてしまい、動かせなくなったというのだ。
私は激怒しました。
金がないからという理由で足場を取り付けなかった所為だ。
そいつらの所為で、お兄ちゃんは歩けなくなるかもしれないのに!!
私と義理の姉は、2回の手術を終え、リハビリを続けていればまた歩けるようになるものだと思っていました。
しかし、現実は甘くなかったのです。
2016年12月、私の家の中は引越し業者のダンボールであふれかえっていました。
中身は全て兄のものでした。
そのときの私は馬鹿でした。怪しい、と思わなかったのです。
ですが、だんだん怪しくなってきました。
兄がしばらくこちらにいる、というのです。
それにしてはやけに荷物が多いような…。
泊まりに来たのかな?
それなら引越し業者なんてわざわざ…。
12月末、私は祖母に尋ねました。
何で、お兄ちゃんはずっといるの? と……。
祖母は静かな声で言いました。
お兄ちゃんはね、もう歩けないの。
○○さん(義理の姉)とも、もしかしたら、離婚しちゃうかもしれないんだよ。
そうなったら、もう、○○さんとは会えないんだよ。
それに、屋根から落ちた時点で歩けないってわかってたんだって。
生きてるだけでもすごかったんだって。
涙が止まりませんでした。
兄がどんな姿になろうと、私の兄だ。
そう思って、いつもと変わらずに接していました。
しかし、兄と出かけることが増えてから、
私はあることに気がついたのです。
やはり、車椅子に座っている人をめったに見ないからか、
擦れ違う人は皆、兄を横目で見ていくのです。
兄は完全に周囲から浮いていたのです。
周囲の人は皆、兄を何の障害も抱えていない人と対等に見てくれないのです。
お兄ちゃんは嫌じゃないのかな。
周りから異色のものを見る目で見られて、嫌じゃないのかな?
何度もそう思いました。
すると、私にはいつの間にか、人を睨む癖がついたのです。
何だよ。
こっちみんなよ。
ふざけんな。
軽蔑しか出来ねーくせに。
うぜーんだよ。
キモい。
見るなっつってんだろ。
そんな言葉が私の中で渦巻くようになったのです。
私って、冬休み中にずいぶん性格が変わったよなぁ、と思うほどに。
ある日、私は母に呼び出されました。
兄のことでした。
その日以降、私はメンタルが弱くなりました。
結婚したとはいえ、まだ、二人の関係は恋人同士の延長みたいなものだった。
もともと車椅子だった兄を姉が好きになったのなら、
2人にすでに子供がいたのなら、
姉が兄は車椅子のままでも良いというのなら、
本当に互いを愛し合っていて結婚していたなら。
それなら話は別。
母はそう言っていました。
胸が苦しい。
そんな日が続きました。
メンタル的に弱った私は、体調を崩しやすくなり、
すぐに風邪を引いてしまいました。
兄は前と変わらないというのに、情けない話です。
私の大好きな兄は、
優しくて、明るくて、とてもいいお兄ちゃんです。
それでも、と思うのです。
それでも、私の他人を睨む癖は直らないでしょう。
世界から障害を抱える人を何の障害も抱えていない人と対等に見ない人が消えるまで、
私のこの癖は一生直りません。
兄が死のうが、私が死のうが、一生直らないのです。
皆さん。
もし、どこかで車椅子に乗った人を見つけたら、
横目で見ながら通り過ぎるのではなく、
気にすることなく擦れ違ってください。
目を逸らすのではありません。
それでは軽蔑しているのと同じです。
だからどうか、気にも留めず、擦れ違ってください。
2017年1月4日
紫眼鏡*より。
2人とも、私の自慢の兄です。
2人とも、スポーツ特待で高校に進学しました。
長男は国学院、次男は作新学院です。
長男は2015年の6月、結婚して家を出ました。
相手は、塗装会社に勤める同い年の女性です。
私にとっては、美人で優しい、大好きな義理のお姉ちゃんでした。
長男夫婦は仲が良く、幸せに満ちていました。
しかし、2016年4月、兄は仕事中に2階から転落、
腰の骨が破裂し、2度と歩けなくなる可能性が高い状態になってしまったのです。
母から聞いた話はこうでした。
兄は、新しく建てられた2階建ての家の塗装をすることになった。
当然、屋根も塗らないといけないので、建設会社に足場をつけるよう依頼した。
でも、建設会社には金が足りないから無理、と断られ、仕方なく足場なしで屋根の塗装をしていた。
この事故には兄の不注意もあったのかもしれない。
兄は、ペンキを塗ったばかりのところに足を置いてしまい、屋根から転落した。
そして、ブロック塀に腰と頭を打ち付けたのだ。
幸い、頭に以上は見られなかった。
その代わり、腰の骨が破裂、2度と歩けないかもしれない可能性が出てきてしまった。
腰の骨が破裂したことで、両足の感覚神経が切れてしまい、動かせなくなったというのだ。
私は激怒しました。
金がないからという理由で足場を取り付けなかった所為だ。
そいつらの所為で、お兄ちゃんは歩けなくなるかもしれないのに!!
私と義理の姉は、2回の手術を終え、リハビリを続けていればまた歩けるようになるものだと思っていました。
しかし、現実は甘くなかったのです。
2016年12月、私の家の中は引越し業者のダンボールであふれかえっていました。
中身は全て兄のものでした。
そのときの私は馬鹿でした。怪しい、と思わなかったのです。
ですが、だんだん怪しくなってきました。
兄がしばらくこちらにいる、というのです。
それにしてはやけに荷物が多いような…。
泊まりに来たのかな?
それなら引越し業者なんてわざわざ…。
12月末、私は祖母に尋ねました。
何で、お兄ちゃんはずっといるの? と……。
祖母は静かな声で言いました。
お兄ちゃんはね、もう歩けないの。
○○さん(義理の姉)とも、もしかしたら、離婚しちゃうかもしれないんだよ。
そうなったら、もう、○○さんとは会えないんだよ。
それに、屋根から落ちた時点で歩けないってわかってたんだって。
生きてるだけでもすごかったんだって。
涙が止まりませんでした。
兄がどんな姿になろうと、私の兄だ。
そう思って、いつもと変わらずに接していました。
しかし、兄と出かけることが増えてから、
私はあることに気がついたのです。
やはり、車椅子に座っている人をめったに見ないからか、
擦れ違う人は皆、兄を横目で見ていくのです。
兄は完全に周囲から浮いていたのです。
周囲の人は皆、兄を何の障害も抱えていない人と対等に見てくれないのです。
お兄ちゃんは嫌じゃないのかな。
周りから異色のものを見る目で見られて、嫌じゃないのかな?
何度もそう思いました。
すると、私にはいつの間にか、人を睨む癖がついたのです。
何だよ。
こっちみんなよ。
ふざけんな。
軽蔑しか出来ねーくせに。
うぜーんだよ。
キモい。
見るなっつってんだろ。
そんな言葉が私の中で渦巻くようになったのです。
私って、冬休み中にずいぶん性格が変わったよなぁ、と思うほどに。
ある日、私は母に呼び出されました。
兄のことでした。
その日以降、私はメンタルが弱くなりました。
結婚したとはいえ、まだ、二人の関係は恋人同士の延長みたいなものだった。
もともと車椅子だった兄を姉が好きになったのなら、
2人にすでに子供がいたのなら、
姉が兄は車椅子のままでも良いというのなら、
本当に互いを愛し合っていて結婚していたなら。
それなら話は別。
母はそう言っていました。
胸が苦しい。
そんな日が続きました。
メンタル的に弱った私は、体調を崩しやすくなり、
すぐに風邪を引いてしまいました。
兄は前と変わらないというのに、情けない話です。
私の大好きな兄は、
優しくて、明るくて、とてもいいお兄ちゃんです。
それでも、と思うのです。
それでも、私の他人を睨む癖は直らないでしょう。
世界から障害を抱える人を何の障害も抱えていない人と対等に見ない人が消えるまで、
私のこの癖は一生直りません。
兄が死のうが、私が死のうが、一生直らないのです。
皆さん。
もし、どこかで車椅子に乗った人を見つけたら、
横目で見ながら通り過ぎるのではなく、
気にすることなく擦れ違ってください。
目を逸らすのではありません。
それでは軽蔑しているのと同じです。
だからどうか、気にも留めず、擦れ違ってください。
2017年1月4日
紫眼鏡*より。
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作者名：紫眼鏡* | 作成日時：2017年1月4日 20時
