【歌い手】ねぇ、僕/俺にしなよ……【日替わり】

16種類の結果パターン

あなたの本日の占い結果です - 2024年5月7日

今日は……luzさんです!



冷たい雫が頬を伝う。

もう涙なのか雨なのかわからなくなってきた。


彼と喧嘩して家を飛び出して来たものの行く宛もなく。
勝手に溢れてくる涙は止まることを知らなくて。

周りの人達にバレないように下を向いて細い道を見つけてはそちらに隠れるように入っていって。


……どれくらい経っただろう。
ポツポツと乾いた地面を濃く染めていくのは冷たい雨。


私は｢くしゅんっ｣とくしゃみをする。
寒い。

ここはどこだろう。
こんなことになるんだったら素直に謝っておけばよかった。

お互い意地張って。るすくんは素直になれない性格だって前からわかってたのに。


｢……大丈夫?｣

｢ひっ……?｣


冷たい雨は急にやんだかのように黒い傘に遮られ。
顔を覗き込んで声をかけてきたのは知らないお兄さん。


｢大丈夫じゃないよね。なんでこんなところにいるの?細い道だし人通りも少ないから危ないよ｣


そう言って笑い、頬に手を当てて親指で優しく目元を拭ってくれた。


｢帰り道わかる?送っていくから道教えて?｣

｢……ごめんなさい。家わからなくて｣


首を横に振りそう言うと、お兄さんはびっくりしたように目を見開いた。

かと思えば優しく笑って。


｢携帯は?無かったら誰か知り合いの電話番号教えて。電話かけてみるから｣


そんなの覚えていない。
携帯も置いてきた。


｢……ねぇ。何やってるの?｣


私がなんて言えばいいか迷っていると、後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。


｢もう、切り替えたんだ｣


振り返って彼を見ると、傘もささずにびしょびしょに濡れた状態で。
ぜえぜえと息を切らしていた。

｢あ、お迎え?よかった。…どれくらい経っただろうお兄ちゃん、可愛い彼女さん泣かせないようにね｣


｢じゃあね｣と言って私に傘を渡したまま走って言ってしまったお兄さん。

……優しい人だった。


｢そんな困った顔するの?あのお兄さんの方がいい?｣


後ろから抱きしめられた。

るすくん冷たい……。これだったらふたりとも風邪ひいちゃうな。でも濡れて、体冷やしてまで探してくれたのかな。


私は首を横に振って、｢るすくんがいい｣と小さな声で言った。


｢じゃあ帰ろっか｣


彼は私からスルッと離れ、前を歩き始めた。


さっきの言葉、雨の音で聞こえなかったのかな?それとも無視?

不安になりながらも、彼を追いかける。


｢……僕も｣


彼の隣に追いついたとき、そんな声が聞こえたのは気のせいだろうか。

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