【APH】まわる廻る世界の中で

10種類の結果パターン

Thank you for reading. - 2024年5月8日

本日のお相手は、本田菊


「菊、見て!」

兄の名を呼んで、瞳を輝かせる。
黒の双眸に映るのは、闇に浮かんだ円を描く白。
今夜は満月だ。

縁側に座布団まで用意して、月見する気満々な妹に、
「風邪ひきますよ」と薄い羽織を掛けて。
そして自らも、YOUの隣に腰を下ろす。

「月、綺麗だね」

何気なく彼女の口から出た、その言葉に。
その気はないとしても一瞬僅かな光を見出そうとする自分がいる。
有名な話。この国での「月が綺麗だ」の一言は、
もちろん情景描写でもあるが、
同時に愛の告白でもある。我、君を愛す。その意味で。

YOUはもう一つの意味を知っているのかと考えを巡らせるも、
彼女の知識量など知れたものではないので、深く考えるのは止めにして。
一縷、自分への慰めを託しながら、

「ええ、私もそう思います。本当に、綺麗な月ですね」

そう返す。
妹は満足げに笑む。兄と久々にゆっくりできるのを嬉しく思っているようだ。
小さい頃から、自分の後にくっついてきて、
仲が良すぎるくらい、仲良しな兄妹。それが2人だった。
お互いのことは、誰よりも知っている。

だが、悲しいことに菊の想いにYOUは気付いていないらしい。
本来思うはずもないことだから、無理もないのだけれど。

兄が、妹を女性として愛しているだなんて、そんなこと。

菊は兄として、男として、それを秘めていなければならない。
知ってしまったら彼女はどうなる?
自分との関係はどうなる?
先に待ち受ける結末を想えば、胸の内に秘めることなど容易かった。

「まったく……悲しいくらい、月が綺麗な夜です」

込み上げた感情、そして嗚咽に、自分でも少し驚きながら、
遠まわしにとはいえ、自らの本心を口にした。

瞬間、ただの月の感想としては重いくらいに聞こえた兄の言葉に
少しだけ、心臓が跳ねたのは、他でもないYOUであった。
切り揃えられた黒の髪に隠れて、菊の表情はよく見えないが、
それでも泣きそうだということは分かる。

気付いてしまう。同じ気持ち。彼も、
そして、YOUも。

「……ねえ菊」
「はい?」
「好きだよ」
「……ええもちろん、私もですよ」

交わされた少ない言の葉を噛みしめる。
その意味は、2人の期待したものとはちょっとずれているけれど。


美しいものほど、儚くて悲しいものですね。

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世界のカケラ

笑ったイヴァンの頬の赤さは、白い雪によく映える(早く向日葵咲かないかなあ)

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