【ハイキュー】今日はどんな赤葦君？【日替わり】

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――今日の俺は、どんな俺でしょうね？ - 2024年4月26日

プロポーズ赤葦×ピアノ少女
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部活が始まってから随分経った頃、教室に忘れ物をしたことを思い出し休憩時間になると走って向かった。


普通教室のある館まで上履きのまま移動するには特別教室のある館を抜けて行かなくてはならない。


早歩きでふと音楽室の前を通った時、、俺の耳に優しい音が滑り込んできた。


不意にその音はとまり、誰かがこちらを向く。


「あれ、京治？」

「…YOU」


彼女はピアノから手を放してこちらを向き、一曲弾いてあげようかと言った。


俺は急いで教室へ行かなくてはいけないのだが、せっかくのお誘い。


一曲くらいならと中に入る。


一息吸って、ピアノに向かった彼女から奏でられたメロディーはとても悲しげで、でもどこか穏やかだった。


解説は、すっかり弾き終えたYOUがしてくれた。


とても悲しそうな顔で。


「この曲はね、ベートーベンが難聴になったときの曲なの」


難聴、それは音楽家としては致命的だった。


…２か月前のYOUもまた、突発性難聴の患者の一人となっていた。


もし今治っていなかったら、今こうしてYOUのピアノを聴くことなんて出来なかった。


「ね、私とそっくりでしょ」

「…」


彼女の顔はだんだん見ていられないほど歪んでいって、次第に涙がぽたぽたと落ちて、乾いた床に吸い込まれていく。


「耳が聞こえなくなった時、それでも私、音楽続けようと思ったよ」

「うん」

「京治が、…喜んでく、れるならっ、なんだって、ひっ、できるって、思ったよっ」

「わかったから」

「でも、また、っ聞こえなく…なった、らって」


泣きじゃくる彼女をそっと抱きしめれば、優しい香りがした。


こんなに小さな身体で、今までどれほどのことを背負ってきたのだろうか。


「YOU」

「…うん」

「俺はお前がピアノ弾けなくなったって、全然いい」

「それって…」

「お前の耳が聞こえなくなったって、俺がずっと傍にいる」


それだけ言うと、俺は音楽室を後にして教室へ急いだ。


…時計を見たら休憩などとうの昔に終わっていたため、誰かがそろそろ俺を捜しにくるのではと思ったのと、

真っ赤な顔を見られるのを防ぐためでもあったけど。


(え、京治…さっきのプロポーズかな…？)



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ベートーベンのピアノソナタ第８番「悲愴」

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