【d!】幸薄少女幸福論【日替わり】

10種類の結果パターン

今日の貴方の幸福論は… - 2024年5月11日

人形に溢れんばかりの愛を/zm △軍パロ▽
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｢──なぁ、こっち向いてぇや｣

まるで壊れ物を触るように、優しく少女の頬に手を添える彼、ゾム。
少女の瞳にはハイライトなんて無く、何も移していない様な濁った色をしていた

｢おれが、おれが強かったら、おまえは、こっちを見てくれたんかなぁ｣

｢…｣

死んだように生きている。
その言葉は少女にこそ似合う言葉であった。
ただ息を吸って、吐くだけ。

眠ることもしなければ、食事を摂ることも無い。
少女は一週間に一度だけ水分を摂る。それだけだ。

｢こわかったよな、もうええんやで、なあ、わらってぇや｣

任務にも行かず、ずっと医務室で少女の手を握り続けるゾム。
目の下には隈も出来ている。

｢ゾム隊長…そろそろ、お休みになられては…｣

｢うるさい、うるさいっ！！
YOUが辛い思いしてんのに、おれだけ休んでなんて居られへん！！！｣

ゾムの隊の副隊長がゾムの右腕に少し触れて声をかける。
が、ゾムは一切揺るがない。目の前の少女が今までの様に、笑いかけてくれるまでは。

｢YOU様の事も分かりますが…今貴方が倒れてしまったら──｣

｢俺の代わりなんていくらでも居るやろ…？？！｣

普段涙を見せないゾムが一粒。右目から涙を零した
唇を噛みながらも、必死にYOUの手を握っている

副隊長はそんなゾムの痛々しい姿を見て、思わず身を引いた

｢おれは…もう大切な人を、置いていきたくないんや｣

止まることを知らない涙は、ゾムの瞳から永遠と流れてくる。
一度、ゾムは涙を拭くために握っていた手を離す。
その直後、YOUの手が動いたのだ。

｢──ぞ、む｣

笑顔は引きつっていたし、声は上ずっているし、手だって震えてる。安心できる要素なんて一つも無かったのに。
ゾムは止まった涙をまた零してしまった

YOUはとある戦争の後から"人形"と呼ばれるようになってしまった。
理由は勿論戦争。ショックで感情を失ってしまったのだ

YOUは笑う所か、話すことさえ珍しいとされていた。
…それは、ゾムの涙腺を緩ませるには十分過ぎた

｢わかるん、か？おれ、おれのこと…YOU…｣

｢ぞむ、ぞ、む──｣

飛びつくようにYOUを抱きしめたゾム
YOUは表情を変えることは無かったものの、背中に手を回した

｢──ありが、とう｣

どちらが言ったか分からない。
その言葉はとても暖かいものであった。

ただ、生きているということが伝わるのが彼らにとっての幸せだ。

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