水底から手を伸ばせ

35種類の結果パターン

あなたの本日の占い結果です - 2024年5月6日

クラピカと共に沈んだら


※


『不毛極まりないね』


あたしはそう吐き捨てた。目の前には瞳を緋色に濁らせているクラピカがいる


『苦しいだけじゃない。復讐なんて』

「憎くないのか？全てを奪った蜘蛛が」

『だって何も戻ってこない』


家族も、親友も、焼かれた村も。何もかもが壊されて、直りなどしないのだ

ねぇ、クラピカ。それが分からないほどあなたは馬鹿じゃない。なのにどうしてなの？


『無意味だよ』

「同胞たちの無念を晴らしたいとは思わないのか」

『無念に思ってるのはクルタ族じゃない。アンタだけだよ』


クラピカの瞳が見開かれる。呪われた緋色が鮮やかに目を引き立たせていた


『果たせなかった約束をアンタは追い求めてるだけ。それに、同じ痛みを彼らに与えたって意味がない』

「なぜ！」

『心の造りが違う。彼らは仲間が死ぬことも覚悟のうちなんだ。でもアンタは違う。そして、普通の人殺しさえ厭うような気質を持っているから』

「それを捨てたら単なる獣だ」

『じゃああたしやキルアも獣？』


そう問いかけると彼は静かにかぶりを振った。その態度にあたしは目の奥が燃え上がるように熱くなったのを感じた

緋の眼。悪魔の使いとされた瞳。あたしはなぜ、こんなものを持っているんだろう


『この瞳は誇りでも何でもない。人間の進化の途中での突然変異にしか過ぎないんだ』

「お前は！クルタで育ったはずだ。なんでそんなことが言える」

『あたしはあの閉じた世界が嫌いだった。どうしようもなく憎くて、この手で殺してしまおうかと何回も考えたんだ』


そして幻影旅団がそれをやってくれた。しかもあたしとクラピカが村を出た後に、だ


『あの村が壊れた時は嬉しかったし感謝した。だからね、あたしは彼らに会いに行ったんだよ。アンタが念を習得する何年も前に』


あたしの異変に今更気が付いたのか、クラピカは鎖を具現化した


『ねぇ、アンタはウボォーギンを殺したよね』


憎しみも怒りも全て分かるよ。あたしの中に溜め込んであって、今すぐに開放したい気持ちが焦る


『クラピカ。あたしは蜘蛛になったんだよ』


腕に這う黒い蜘蛛。刻まれる数字

あたしは蜘蛛になったよ。村を滅ぼしてくれたあの人達に敬意と感謝を払って


『団長の命令だ。アンタを殺すよ』


さらば家族。さらば同胞


『静かに眠れるようにしてあげるよ』


哀しみの籠った鎖があたしに飛んでくる


それを殺意で跳ね返して、あたしは嘲笑を浮かべたのだった

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