今日はどんなキスをする？【忍たま】

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貴女の今日のお相手は……？ - 2024年4月27日

(立花仙蔵)


夕焼けが差し込む作法室。
そこで私は、立花先輩に頼まれて委員会の後片付けの手伝いをしていた。
なぜ委員会の後輩に手伝わせないのか、なんてことは思わない。
だって、先輩と二人きりの時間は、私にとってこの上なく幸せなものだから。

現在、私は使った冊子を棚に戻し、先輩は机で黙々と書類に筆を滑らせている。
さすが作法委員長、なのだろうか。
文字を書くにしても、その白い指先のひとつひとつの動きが流麗で、女の私でも敵いっこないなぁ、と思ってしまう。



自分の仕事が終わって、手持ち無沙汰になった私は、机をはさみ先輩と向かい合わせに座った。

……先輩の長い黒髪は、夕日に照らされていつもより艶めいて見えた。





夕焼けというのは、一番に明るい時間が終わるとあっという間に夜へ吸い込まれてしまうらしい。

その少し手前、深い紫色の空気の中で、立花先輩は筆を置く。
「よし、これにて終了だ」
「今日中に済ますことができて、よかったですね」
「……そうだな」

先輩に従い立ち上がり、数歩。

互いを隔てていた机がなくなったとき。


とん、と小さな衝撃が背中に走った。

「ありがとう」

そう低く囁かれたのは、なぜか本当に近い距離で。

「YOUのおかげだ」

心臓が、どきりと高鳴る。





……先輩に抱きしめられていた。





背中に回された手は、思っていたよりも大きくて、力も強い。

着物越しに分かる先輩の体つきは、とてもしなやかで強靭。


本当は少しの間だったろうに、私は時が止まったかのように感じていて。


「っ！？」

先輩の口づけで、我に返った。

残ったのは、頬への優しい感触。


「あ、あの、……」


私が口ごもってしまうと、立花先輩はくすりと笑って、しかし目を見据えてこう言った。


「YOUのことだから……。気付いていなかったろう？私がお前に、好意を寄せていることなど」

—————これでも、男なんだよ。

YOU、好きだ。



……ずっと求めていた言葉が、夢のような言葉が、頭の中で反響する。

「わた、し、も……。大好きです」

……頬が、熱くなっていく。

立花先輩が、驚いたのか目を見開く。

なのに私は、自分の本音がぽろりと漏れてしまったことにも、すぐには気づくことはできなかった。

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