何でもありのあかがみん短編【日替り】

5種類の結果パターン

今日のお話は……？ - 2024年5月12日

「雪だ〜！」

「がちこ雪好きだよね〜」

四角く切り取られた窓の外には今年始めての雪が降っている

普通なら皆喜ぶのだが、生憎俺は雪が嫌いだ

雪だるまの癖にって言われそうだけど

やっぱり雪は苦手だ

ここだけは設定に忠実には行けない


なぜかって？

だって思い出してしまうから






俺の家は割合裕福な家庭だった

父親はその道で有名な学者で

母は実家がお金持ち


自分の家が他の家と比べて裕福な家庭であることは当時八歳だった俺でも分かってた

それが裏目に出たような事件だった


あの雪の日

庭の倉庫の扉の隙間から見えた光景に

俺は言葉の発し方を忘れてしまっていた

ただ終わる事を知らずに降り続く雪と

その上に横たわる両親と

キラリと光る銀色のナイフと



真っ赤に染まった雪








俺が今まで感じた中で最大の恐怖だった

俺は泣いた

声を押さえて

涙が枯れるまで泣いた


寂しかった

もう両親に会えないことが





どれぐらい時間が経ったのか

庭の隅に佇む木造の倉庫の中で縮こまっていた俺には分からなかった

ｷｨｨ

少し軋んだ音を鳴らす扉を開けると

先程と変わらず両親は

雪の上に『転がっていた』



空に浮かんだたくさんの星たちが

澄んだ空気であることを証明していた


俺が叩いた自分の足が

これが夢ではないと証明していた



油断していたら瞬く間にこの身が星空に吸い込まれてしまいそうで

でも、それも良いと思った



膝から足首にかけて

冷感が這うように伝わり

履いていた靴下はじんわりと湿気を帯びてきた



俺の視界には真っ白な雪と

決して見たくなかった真っ赤な雪



雪は俺から全てを奪った



違うんだってわかってはいる

雪が降っていたのはたまたまで

雪には何の罪もない


でも






あの日俺の目に焼き付いたあの真っ白な雪だけは忘れられない

だから

雪は嫌いだ


また大切な人を奪って行きそうで

全てを無き物にしてしまいそうで



でも

「あつおさ〜ん！はやく〜」

「すいませんw」


皆と一緒に見る雪は

『あの日の事』を忘れさせてくれるぐらい

青空のもと

美しく輝いていた

ーーー

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