あら？...珍しいわね、このカフェにお客さんなんて。
私？私はこのカフェのオーナーの澪(みお)よ、よろしくね。
...ねぇお客さん。一つ聞かせてもらうけれど、
...何か辛いことでもあった？
...ここのカフェはね、いろんな人の「慰めてもらっている思い出」を注文できるの。
日替わりメニューしかないのだけれど...
...それでもよければ、せめてこのカフェに居る時間だけでも、ゆっくりしていってね。
-メニュー-(慰めてあげる人×慰められる人)
慰められる人視点
・赤村莉里×黄崎瑠夏
-「優等生」-
・赤村莉里×桃田愛
-「言われ続けても」-
・赤村莉里×青谷凛
-「君と一緒なら」-
・赤村莉里×黒山華
-「無理はしなくていい」-
・黒山華×赤村莉里
-「私を信じて」-
・カフェの裏話
-「作者の余談」-
...1個につき1時間ほどかかあることが判明致しましたので、1日一個追加を目指して日々精進してまいります...。
7種類の結果パターン
きっと、大丈夫。 - 2024年5月3日
赤村莉里×黄崎瑠夏
-「優等生」-
私は、まるで操り人形だ。
何か親に言われればそれを実行する。
言いつけはきちんと守る。
自慢ではないが、勉強も運動もできた。
私は常に「優等生」だった。
そうすれば、必要とされなくなってしまうと思って。
...ふと、気付いた。
これは、私ではないんじゃないかと。
私は、「私らしい私」を演じているだけなのではないか、と。
その途端、ある程度満たされていた私の生活は一気に色褪せる。
ああそっか、今まで私がしていたことは、「虚しい」この上なかったのだ。
「あ、はは...」
乾いた笑い声が一人しかいない私の家に木霊する。
私の人生は、きっとどうやっても虚しいものなのだろう。
ならば、いっそ一回くらい、親に反抗してみよう。
「やってしまえ。」
新しいことに挑戦、してしまおう。
「この留守番を任されている家から出てしおうか。」
独り言を言い、準備を始める。
「あの子なら...莉里なら、きっと受け入れて、くれるよね。」
彼女は、私が信頼している友達、だ。
あの子は底抜けに明るく、優しい。
彼女に救われた回数は数えきれない。
ねえ莉里、私を助けて。
操り人形の、私を。
一刻も早く、と家のドアノブに手をかける。
ドアノブはいつもと変わらないガチャという音を立てる。
いつもと変わらない、はずなのに。
どうしてか、私には世界が輝いているように感じた。
「行って、きます。」
どれくらい歩いただろうか。
昼過ぎには家を出たはずなのに、すっかり夕暮れの橙が綺麗に空を染めていた。
「ここ、のはず...」
ピンポン、と控えめにチャイムを押す。
「はーい...って、瑠夏...？どうしたの...！？」
「ごめん...事情は後で話すから、入れてくれるかな...？」
「...うん、わかった。」
「...何があったの？」
「あのね莉里...」
私は包み隠さず全てを話した。
優等生を演じていたことから、なぜだか虚しくなってしまったことまで。
そこで、家を出てきたこと。莉里の家に来てしまったこと。
「そっか...。ねえ瑠夏、」
「...ん？」
「瑠夏は、瑠夏なんだよ。だからきっと...自分に違和感を感じる瑠夏も、瑠夏なんじゃないかな。」
「違和感のある私も私、ね...そうかな...？これも私...？」
「うん、そうなんじゃないかな。」
「そっか、そうだよね。優等生の私も、私だもんね。」
ありがとう、莉里。
私は、あなたにまた、救われちゃったね。
-「優等生」終わり-
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作者名：澪 | 作成日時：2021年3月14日 21時
