夏恋 Ryo.Nishikido

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高校1年、夏。

隣の席の無口な彼と距離が縮まる。

日替わりです！処女作ですので、何とぞよろしくお願いします。錦戸くんメインです。

5種類の結果パターン

今日のシチュエーションは？ - 2024年5月11日

暑い時間に登校して、汗をかきたくない。
その思いから毎朝はやい電車に乗る。

自宅の最寄り駅のホームから、いつもと変わり映えのない車両に乗り込み、座れる椅子はないかと車内を見回すと、いつもは見ない顔があった。

隣の席の錦戸くんだ。

向こうもこちらに気づいたようで、少し目をを見開いたあと、小さく会釈をした。

学校で特に仲良くしているわけではないけど、
校外で会うのは新鮮で、彼のもとへ近付いた。
すると、錦戸くんは何を思ったか
おもむろに立ち上がり、「座ってええよ。」と片耳のイヤホンを外しながらいった。
少し悪いけど、公共の場で
彼に恥をかかせるほうが良くないだろうと思い、
私はありがとう、と椅子に座った。

向かい合うようにしてつり革を持って
車内に立つ錦戸くんは、再び黄色いイヤホンを
両耳に付け直し、難しそうな顔で
スマホを睨みつけている。
何を悩んでいるのかな、とぼーっと
彼の手元を見ながら考えていたら、
不本意にも目が合ってしまう。
1度画面に目を落としたあと、
「あのさ、今日雨降ると思う？」
と心底困った口調で私に尋ねる。
その眉毛がハの字に下がっているのがおかしくて、くすくす笑っていると、
「俺真剣やねん！…傘忘れてもうたから…」
一瞬鋭くなった眉毛がまたすぐに下がって、
ショボンとする。なんだか可愛くて、
母性がくすぐられる。
「わからないけど、降らないといいね。」
どっちつかずな私の返事に、もお～とさらに困る。錦戸くんとこんなに話したのは初めてで、
なんだかふわふわして、
笑いが止まらなくなってしまう。

彼は、そんな私を見てちょっとだけ嬉しそうに、「俺、女子とこんなに話したの初めてや。」
なんて言うから。きゅんと胸が苦しくなって、大きくなる自分の鼓動ばかりが聞こえてくる。
「明日もこの電車に乗るから。絶対来てな？」
くしゃっと笑って、私のこころにとどめを刺した。

夏のはじまり、きみに恋をする。