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「(私が死ぬ事が目的?否、それはあまりにもさっきまでの発言が不自然…)」
相手を研究しろ。どうすれば、この状況を抜け出せるのか。
私は、深呼吸して、口を開いた。
「分かりました、飛び降りましょう。……ですが、私の最後の時間を、貴方の事について使いたいです。話してくださいませんか?なぜ勇気を出してまで、この場にいるのかを」
私の言葉に、女の子の目は動揺した。人間らしくて安心する。
「あ、悪用…しない?」
「はい。だって、死にますから」
「……」
バツの悪い顔をされた。そりゃそうだろう。誰だって、「貴方のせいで私は死にます」などと言われて、気持ちのいいはずがないから。
「…仲間が、死んだの。私達は全員4級だったのに、何故か2級の任務に回されて…私以外は死んで……それで、仕返しをしようと思ったの」
「私は、貴方の仕返しに役立ちますか?」
「……役立つわよ。だって、きっと私より強いんだから」
人の価値を強さで決める世界に、文句は無い。どの社会でも結局はそうだ。数値で決まる世の中。
けど、私には彼女のように、世界を動かしてやろうという意気さえないのだ。
「…どうぞ、私の命を役立ててください。呪術界に、貴方の名前が轟くといいですね」
「本当に…飛び降りるの?」
「はい」
頑張って、口元に弧を描いた。本当は怖くて仕方なかった。
でも、絶対に死んでやるものか、と思っていた。
女の子は、私を見て、何かを決心したようだった。やがて、こちらの方に来て、私の服の裾を掴む。
「……私も、貴方と飛び降りる」
「…自分の命を無下にしたら良くないですよ」
「良い。貴方に話を聞いて貰えたから、もう十分」
そうは言っていても、手は震え、顔の引き攣っている様子を見るに、この子は生きるという行為への執着をやめたがっているんだと察した。
「(高校生ぐらいの女の子が、こんな風に思う時があるのなら…)」
きゅう、と、心臓が締め付けられる感覚。どうして、大切な人を無くしてしまう事が、たった2文字で表せてしまうのだろう。
でも、だからこそ、それを避けたい。この子に死んで欲しくない。
「……それじゃあいきますよ…!」
「あ!待っ…!」
女の子を抱えて、ビルから足を離す。
一瞬見えた、女の子の顔。
後悔でいっぱいの顔。
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作者 - 紅葉さん» 弐の方にもコメントしてくださっていたんですね!気づくのが遅れてしまってすみません!読んでくださってありがとうございます! (2021年2月24日 22時) (レス) id: abf4ad4153 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - 五条先生の創作アルバム怖いですね……最後のセリフで「ヒェッ」ってなりました……。面白いです! 真希さんのツンツン具合がまた好き……続き読んできます (2021年2月22日 8時) (レス) id: 7ac5223945 (このIDを非表示/違反報告)
作者 - ゆうなさん» わっ、本当に申し訳ございません…。修正させていただきました!今後も当作品をよろしくお願いします! (2021年2月6日 23時) (レス) id: abf4ad4153 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうな - いつも楽しく読ませて頂いています!あの、22話くらいから、名前変換ができなくなっている気がします。華瑠→華琉になっているからだと思われます!此方の不具合でしたらすみません…これからも応援してます!! (2021年2月6日 11時) (レス) id: 3ecb08afbf (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時:2021年1月26日 23時